鉄仮面救急医は、再会した身代わりママを猛愛包囲で逃がさない【秘密の溺愛シリーズ】
「あら、紗雪さん。お口に合わなかったかしら?」

 夫人に気づかれてしまった。

「いえ……お料理はとてもおいしかったのですが、帯が少々苦しくて……」

「ああ」と得心したように夫人がうなずく。

「でしたら、私達はこれからのことを話しておきますので、紗雪さんは少しお庭を散策していらっしゃったらどうかしら」

「えっと……」

 あと少しなのにこの場を離れていいのかと返事にためらう。

「ここはお庭も素敵ですし、今はちょうど紅葉が見頃ですよ」

 夫人がそこまで勧めてくれるのだ。これ以上断っては失礼にあたる。

 息抜きも兼ねて行ってみようかしら。

「でしたらお言葉に甘えて少しだけ――」

「旺史郎さん、案内して差し上げて」

 え……?

 驚いて顔を上げたら、彼と目が合った。夫人が『お庭を散策』と言ったのは、『後は若いふたりで』という意味なのだ。

 そんな……彼とふたりきりなんて緊張しすぎて息抜きになんてならないわ。

「あの、私ひとりで――」

 大丈夫ですと続けようとして、はたと気づいた。伯父がいないところの方が、自分のだめなところをアピールしやすいかもしれない。

「ひとりでは心もとないので、お願いしてもよろしいでしょうか」

 彼は無言でうなずくと立ち上がった。

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