鉄仮面救急医は、再会した身代わりママを猛愛包囲で逃がさない【秘密の溺愛シリーズ】
「もっ……申し訳ございません! 早く戻って冷やしましょうっ」
母屋に戻ろうときびすを返したら、「別にいい」と静かない声が言った。振り向くと、切れ長の目が私をじっと見ているが、変わらない表情からは意図が読み取れない。
「でも……。たくさんの命を救う大事な手です。もしなにかあったら困る人がたくさんいます」
母の着物が破れたりしたら悲しくてつらいけれど、それでも誰かほかの人が苦しむわけじゃない。私もせいぜい膝をすりむく程度だ。
だけど彼の手は人の命を左右する手だ。代わりはきかない。
「これくらいで傷めるほどやわじゃない。それに――」
言いながら彼が手を差し出してきた。そこにはなんの痕もなく、赤みも引いている。
「よかった……」
ほうっと息をつくと、急に恥ずかしさが込み上げてきた。
「す、すみません……勝手に転んだ上に余計な世話でしたよね……」
自分の空回りぶりが情けない。
だけど、転ぶような間抜けな人間だと印象づけられたならそれでいいと思い直す。
とにかくだめなところをたくさん見せて、医師の嫁には不適格だと思ってもらえたら……。
熱い顔を伏せたまま、視線だけそっと持ち上げると、彼が私をじっと見ていた。目が合ってドキッと心臓が跳ねる。反射的に視線を逸らした。
彼がなにも言わず再び歩きだしたので、今度こそ転ばないように気をつけながら大きな背中を追った。
母屋に戻ろうときびすを返したら、「別にいい」と静かない声が言った。振り向くと、切れ長の目が私をじっと見ているが、変わらない表情からは意図が読み取れない。
「でも……。たくさんの命を救う大事な手です。もしなにかあったら困る人がたくさんいます」
母の着物が破れたりしたら悲しくてつらいけれど、それでも誰かほかの人が苦しむわけじゃない。私もせいぜい膝をすりむく程度だ。
だけど彼の手は人の命を左右する手だ。代わりはきかない。
「これくらいで傷めるほどやわじゃない。それに――」
言いながら彼が手を差し出してきた。そこにはなんの痕もなく、赤みも引いている。
「よかった……」
ほうっと息をつくと、急に恥ずかしさが込み上げてきた。
「す、すみません……勝手に転んだ上に余計な世話でしたよね……」
自分の空回りぶりが情けない。
だけど、転ぶような間抜けな人間だと印象づけられたならそれでいいと思い直す。
とにかくだめなところをたくさん見せて、医師の嫁には不適格だと思ってもらえたら……。
熱い顔を伏せたまま、視線だけそっと持ち上げると、彼が私をじっと見ていた。目が合ってドキッと心臓が跳ねる。反射的に視線を逸らした。
彼がなにも言わず再び歩きだしたので、今度こそ転ばないように気をつけながら大きな背中を追った。