鉄仮面救急医は、再会した身代わりママを猛愛包囲で逃がさない【秘密の溺愛シリーズ】
車を走らせること約一時間。途中有料道路も通ったが、黛さんの運転はあぶなげなく滑らかだ。
多少緊張はしていたけれど、なぜかお互い黙っていても気づまりではない。相変わらず彼の表情はほとんど動かないけれど、不機嫌というわけではないとわかってきた。どうやらこれが彼の通常モードだのようだ。
ときどきぽつぽつと会話をしているうちに、突然目の前に視界が開けた。
「海だわ!」
思わず大きな声を出してしまい慌てて口を手で押える。あきれられたかもと隣をチラリと見たが、彼はまったく気にしたそぶりはない。
並大抵のことじゃ動じなさそう……。
さすが救命救急のドクターだけある。
久々に見る大海原に高揚する気持ちをグッとこらえ、助手席から静かに海を眺める。そうするうちに車が駐車場に止まった。
「降りよう」
「はい!」
待ってましたとばかりに車から降りた瞬間、潮風が強く吹いた。
「わっ」
髪を巻き上げられ、慌てて手で押さえたが遅い。お見合いのときとは違って下ろしていた髪が、四方八方に散らばされる。せっかくセットしてきた髪がぐちゃぐちゃになってしまった。