鉄仮面救急医は、再会した身代わりママを猛愛包囲で逃がさない【秘密の溺愛シリーズ】
 これだからネコっ毛のくせっ毛は……。

 しかたなく手櫛で髪を整えていたら、突然横から伸びてきた手が頬に触れた。勢いよく振り向くと、切れ長の目が思いのほか近くにあった。目を見開いたまま微動だにできずにいると、彼の指がスーッと私の頬をなぞった。自分のものとは違う、丸くて硬い感触。心臓がこれまでになく大きく跳ねた。

 両目を見開いたまま動けないでいると、彼はすぐに離れた。そのまま無言で海辺へ向かって歩いていく。そこでやっと私は呪縛が解けたかのように大きく息をついた。

 びっ……くりしたぁ……。

 冷静になれば、顔についていた髪を払ってくれただけだとわかる。

 私の顔にかかっていた髪を避けてくれたのだと気づいたときには、彼はすでに背中を向けて浜辺に下りていくところだった。
緩いカーブを描く湾に白波が打ち寄せている。晴れていれば富士山も見えただろう。夏は海水浴客でにぎわうが、十一月下旬の今は人もまばら。遠くに波乗りをしているサーファーがポツポツいる程度だ。

 ショートブーツのかかとを砂に取られながらも、どうにか波打ち際までやってきた。

「たまには海もいいな」

 彼がひとり言のようにつぶやいた。

「そうですね。潮の香りと波の音に癒されます」

「そうだな。それにこの大海を前にしたら自分がいかにちっぽけな人間かと再確認できる」

「ちっぽけな人間? 黛さんが?」

 隣を振り仰ぐと同時に、彼は海の向こうを真っすぐ見つめたまま口を開く。

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