鉄仮面救急医は、再会した身代わりママを猛愛包囲で逃がさない【秘密の溺愛シリーズ】
 両手をギュッと握る。意を決して口を開こうとしたとき、ふわりと肩になにかを掛けられた。彼のコートだ。

「これ……」

「着ておけ。連れ出しておいて風邪を引かせるわけにはいかない」

「あ……りがとうござい……ます」

 前を両手でギュッと握って閉じた。ダークグレーのチェスターコートにすっぽりと膝まで包まれる。温もりとほのかな香りに、鼓動が勝手に速まった。

 こんなふうにされたら、私……。

 たとえ頭の中だけだとしても、それを言葉にしてはだめだと踏みとどまる。

 取り返しがつかない感情が生まれる前に終わりにしなきゃ。

 こうしてふたりきりで海を見るのは、これが最初で最後だ。すべてを告げれば私は彼に嫌われる。それでも彼をだましたままでいるよりはずっといい。

 彼のコートの前合わせをギュッと握って覚悟を決める。

「私――」

 言いながら顔を上げた瞬間、ポツリと頬にしずくが当たった。

「あ……」

 空を見上げると、いつの間にか黒い雲が背後から迫っている。

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