鉄仮面救急医は、再会した身代わりママを猛愛包囲で逃がさない【秘密の溺愛シリーズ】
「雨だな。これはザッと降るぞ。車に戻ろう」

「はい」

 きびすを返したところで、雨だれがポツポツと落ちだした。どんどん勢いを増している。
 慌てて走ろうとしたが、足を砂に取られてなかなか進まない。急げば急ぐほどブーツのかかとが砂にめり込む。

 彼が振り返った。私が遅れているのに気づき、戻ってこようとする。

 雨粒はどんどん大きくなっていて、このままだと駐車場にたどり着く頃にはふたりともしっかり濡れてしまうだろう。

「私は大丈夫なので先に戻っていてください」

 聞こえるように大きな声を出したつもりなのに、波音が邪魔したのか、彼は私のところまで戻ってきた。
 お見合いのときといい、鈍くさいところばかりを見られている。最後の最後まで情けないと思いながら「すみません」と謝ると、突然彼が私を抱え上げた。

「きゃあっ」

 急に高くなった視界に悲鳴が飛び出る。

「あのっ、下ろしてっ」

「ふたりそろって濡れねずみになりたくないなら、おとなしくしておけ」

 彼はそれだけ言うと、早足に海岸から離れていく。

 子どものように抱えられて運ばれるなんて恥ずかしくてたまらないけれど、ここで私が無駄な抵抗をすれば車に着くのが遅くなるだけだ。彼をびしょ濡れにするわけにはいかない。

 唇をかみしめて羞恥をこらえていると、ガシャンと大きな音に続いて、悲鳴が聞こえてきた。

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