鉄仮面救急医は、再会した身代わりママを猛愛包囲で逃がさない【秘密の溺愛シリーズ】
「なにそれっ、そんなの瑠奈に関係ないし」

「うちが潰れたら、おまえだって今までみたいな贅沢はできなくなるんだぞ。それでいいのか?」

「い……嫌よ」

 瑠奈が不満そうにつぶやく。

 羽野医院の経営状態はいよいよよくないらしい。経理を扱う私は薄々気づいていたけれど、家業にまったく興味のない瑠奈には寝耳に水だったのだろう。

 込み入った話になりそうね……。

 持ってきた書類で今日中に決裁が必要なものはない。出直した方がよさそうだ。

「あとでまた参ります」と口にしてきびすを返したとき。

「そうよっ、この子がいるじゃない!」

 大声と共に指をさされてビクッと肩が跳ねた。嫌な予感がする。

「うちとの縁談って言うならこの子だっていいはずよ。だってこの子は〝うちの子〟なんでしょ!」

「いや、だが、あちらが欲しいのは……」

 叔父が濁した言葉の先は、容易に想像できた。おそらく先方が欲しがっているのは、〝羽野の血統〟だ。

 羽野医院は小規模の病院だが、実は血統がかなり古い。遡れば江戸時代、御典医(ごてんい)を務めたほどの医師家系だ。今の院長である伯父はその五代目。彼の血を引く子は瑠奈ただひとりだ。

< 4 / 45 >

この作品をシェア

pagetop