鉄仮面救急医は、再会した身代わりママを猛愛包囲で逃がさない【秘密の溺愛シリーズ】
 瑠奈が私を見て、ニヤリと意味ありげな笑みを浮かべる。

「いいわよね、紗雪。あんたはずっとあたしのものを奪ってきたじゃない。だからこの縁談もあんたにくれてやるわよ!」

「そんな……私は……」

 瑠奈のものを奪おうとしたことなんてない。そう言い返したいのにできなかった。心当たりがあったからだ。

 私が七歳で引き取られたとき、ひとつ上の彼女は八歳だった。八百キロ以上離れて住んでいた私達は、従姉妹といいながらもほぼ初対面に等しかった。

 私にとっての伯母は、彼女にとっては母親だ。瑠奈はある日いきなり現れたよそ者に母親を取られたと感じたのだろう。彼女が私にきつく当たるのはそのせいだとわかっている。

 引きとられた当時から『私のものを取った』『よそ者のくせに』と言われ続けているうち、私の中に『瑠奈がひとりでもらうべきものを分けてもらっている』という意識が根を張るように広がっていった。

 罪悪感から瑠奈の嫌味や言いがかりもがまんしてきたし、無理難題やわがままも聞いてきた。
 だから縁談の身代わりも――なんて言われてもできるはずがない。羽野家と血のつながりのない私では結婚の条件を満たせない。

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