鉄仮面救急医は、再会した身代わりママを猛愛包囲で逃がさない【秘密の溺愛シリーズ】

 そうしてやってきた土曜日。秋らしいうろこ雲の広がる青空の下、私は料亭の一室にいた。

 十畳ほどの和室の中央には、六人掛けのダイニングテーブルが置かれている。その椅子に伯父とふたり並んで座り、相手方が来るのをじっと待っている。

 身に着けている振袖は亡くなった母の形見の京友禅(きょうゆうぜん)で、白を基調に赤や金の文様や色とりどりの花、鴛鴦(おしどり)や鶴(つる)、御所車(ごしょぐるま)などの古典柄が華やかに描かれている。袖を通すのは成人式以来だ。

 こんなときじゃなきゃ、うれしい気持ちになれたのに……。

 これから詐欺の片棒を担ぐのだと思うと、きつく締められた帯よりも胸が苦しくなる。床の間に活けられた季節の花を眺める余裕もない。

 あれから事あるごとに伯父には考え直してほしいと訴えてきた。けれど『だめだ』の一点張りで院長室を追いだされる。しまいには院長室出入り禁止にされてしまった。

 どうしよう……このままじゃ相手をだますことになっちゃう……。

 もし縁談が進めば、私が黛総合病院の次期院長ドクターと結婚するのだろうか。そんなのは無理に決まっている。

 伯父の話によると、お見合い相手は黛旺史郎(おうしろう)。年は三十二歳で、東京の大学病院で救急医として働いていたが、黛総合病院の後を継ぐために戻ってくるという。

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