パイロットパパは、三つ子とママを諦めない
「高瀬専務、こちらが競走馬の引退施設も兼ねた、アクティビティ用の牧場になります」
 美鈴さんの言葉に、今度は別の意味で頭が混乱した。
 高瀬専務――?
 蒼真(そうま)さんは、パイロットだったはずだ。
 どうして、専務なんて肩書きがついているの……。

 覚悟を決めて、ゆっくりと振り返る。
 長身の身体、風に揺れる黒髪。五年近い歳月を経ても、ひと目でわかる整った顔立ち。
 忘れるはずなどなかった。
 どれほど遠くへ逃げても、心の奥底から消えることはなかった。
 ――今まででただひとり、愛した人。

『美桜、かわいい。好きだよ』
 彼の声を聞いて、かつて幸せで仕方なかった時間を思い出してしまう。
 ――忘れたことなど、一度もなかった人。

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