最弱探偵

【11 一時的な記憶喪失により(6)】

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・【11 一時的な記憶喪失により(6)】
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 大柄の男子生徒は顔を真っ赤にして止まらない。
「何でU―15の時は空手で優勝したのに、U―18の時は柔道だったんですか!」
「強いヤツと闘いたかっただけー。それにしても空手の協会酷くて、柔道始めたら空手のほうには出ちゃダメだってさー」
「さすがです! 武道の女神! 王茶真央選手!」
「その古い呼び名やめてー。おうちゃま、今はただの小学校教諭なのー」
「もったいないです!」
 僕もノッチさんも坂本さんも石谷さんもポカンとしている、が、虎太郎お兄ちゃんだけは冷静で、
「この大柄な男子生徒はもしかすると被害者のかたですか? 村井さんですか?」
「あーーーーーーーーーーーー、そだけどもー」
 と面倒クサそうというか、王茶先生との会話に水を差すなって感じに相槌を打った村井さん。
 虎太郎お兄ちゃんは続ける。
「では貴方は坂本さんや石谷さんに後頭部を殴られたわけじゃないんですね?」
「あったりめぇだろ! こんな雑魚にやられるはずねぇだろ! 多分俺! 車に轢き逃げされたんだわ!」
「分かりました」
 と頷いた虎太郎お兄ちゃん。でも僕は見逃さなかった。坂本さんや石谷さんがどこか戦々恐々としていたところを。
 虎太郎お兄ちゃんはまるでしつこく確認するかのように、
「では本当に坂本さんや石谷さんは一切関係無いんですね?」
 村井さんはかなり嫌そうな顔をしてから、
「関係ねぇだろ、絶対に。こんな雑魚にやられねぇって。俺が記憶喪失になるなら、車に轢かれたとかだろ」
 すると虎太郎お兄ちゃんが伺うように、
「坂本さん、石谷さん、お二人さんにお話よろしいでしょうか?」
 と言った刹那、村井さんが叫んだ。
「関係ねぇヤツに手間かけさせんなよ! バカじゃねぇのか! おい! 野田! テメェもだからな!」
 ノッチさんは震えあがって、その場に腰砕けになってしまった。
 虎太郎お兄ちゃんは深呼吸してから、
「分かりました。今はカマをかけたわけですが、本当に関係無いみたいなので失礼します」
 と言ってパソコン室から出始めたので、僕も王茶先生もついていくと、なんと村井さんもついてきて、
「王茶真央選手! 話をもう少し聞きたいんですが!」
 王茶先生はチラリと虎太郎お兄ちゃんのほうを見た。
 虎太郎お兄ちゃんはうんと深く頷いてから、
「今後、誰かを守るためだけに武力を行使するならば、王茶先生が見極めた上で武術の心得をお話してもいいんじゃないでしょうか」
 村井さんは笑顔で、
「おい! よく分かんねぇけど! テメェいいとこあるじゃねぇか!」
 王茶先生は虎太郎お兄ちゃんと村井さんを交互に見てから、
「じゃ! じゃあ! おうちゃまは村井くんともう少しお話してくわー!」
 と何だかウキウキしながら、そう答えて、王茶先生と村井さんとはその場でバイバイした。
 虎太郎お兄ちゃんと二人きりになったところで、僕は、
「坂本さんと石谷さんの反応見た? 絶対あの二人が犯人だよね!」
 虎太郎お兄ちゃんは人差し指を立てて、シッのポーズをしてから、
「犯人が誰ということは、事件解決にとっては実はあまり関係無くて」
「それが全てじゃないのっ?」
「もっと最良があるということです。なんせわたしは最弱なんで、穏便にいきましょう」
 一体何が何やらで、僕には一切分からなかった。

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 校長室に着いた。というか校長室に行くんだ。
 ノックして、返事がちゃんあってからドアを開けた虎太郎お兄ちゃん。
 校長先生は僕らを見るなり、
「王茶先生はどこですか? あー、ソファーにおかけになって」
 僕と虎太郎お兄ちゃんは校長先生の対面になるようにソファーに座ってから、虎太郎お兄ちゃんは落ち着いた声で、
「今、王茶先生がきっと村井さんを指導してくださっていると思います。強い人は強い人が好きなので、王茶先生が良い方向に導いてくれれば、きっと村井さんはもっと良くなるはずです」
 校長先生は小首を傾げながら、
「王茶先生は……強いんですか?」
 そう、それ僕たちも今知った情報で、と僕は答えたかったけども、まあ虎太郎お兄ちゃんが聞かれているので、僕は黙っていると、
「はい、王茶先生はU―18ワールドカップの女子柔道王者です。さらに日本体育大学時代に現在幕内力士で前頭筆頭の岩倉関を豪快に投げ飛ばして『格闘技おもんない、格闘技オワタ』と言って教員になった逸話もあるお方です。ちなみに岩倉関は逃げるように大学中退して角界に入ったみたいな噂もありますよね」
 僕は「え!」と声を出してから、
「虎太郎お兄ちゃん! 王茶先生が強いって知ってたのっ?」
「はい、最弱なんで情報は全て入っています。こういう探偵業をするなら、なおさら強い味方がいてくれないと困るので」
「も、もしかすると、王茶先生が王茶高校の、その、理事長とかの娘、ということは?」
「勿論知っています。だからきっと王茶先生は私を王茶高校に入れたいんでしょう。全寮制の良い高校です。王茶先生に出来るところを見せておくことは将来のためにもなるはずです」
 何だ……知っていたのか……いやいやそりゃそうだ、虎太郎お兄ちゃんが知らないわけないじゃないか。
 校長先生は「ほほう」と声を出してから、
「で、犯人は分かりましたか」
 虎太郎お兄ちゃんは深く頷き、
「はい、坂本さんと石谷さんだと思います」
「やっぱり!」
 と、僕はつい声を出してしまった。
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