最弱探偵
【16 鋭利な刃物(4)】
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・【16 鋭利な刃物(4)】
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さてさて、探偵業の報酬も大切だけども、一番は事件が解決することだ。小百合さんがこの三人を張っていてくれている分には、別に……待てよ、そもそもこの小百合さんが犯人という可能性だってあるわけだ。こっちをミスリードさせようとしているかもしれない。
まあどっちにしろ、ここで小百合さんとは少し離れて、神楽さんのほうを見ることにした。
神楽さんはずっと嬉しそうに王茶先生と会話している。被害者は告白魔で女子生徒からは嫌われていると言っていたけども、その裏取りをしたい。
ちょっと口を挟むか、
「神楽さん、ちょっといいですか?」
すぐに神楽さんは「おっ」と言ってから、
「何だい? 柔道する気になったかい?」
「いや、あの、被害者の男子生徒は告白魔と聞いたんですが、それは本当ですか?」
「マジかよ、いつの間にそんな情報を」
「小百合さんから聞きました」
「まあそうだよな、関田は確かに告白魔だよ。あんな情けない男、俺が背負い投げで一発やってやりゃ良かったよ。刺されるのはさすがにやり過ぎだもんな」
すると虎太郎お兄ちゃんが、
「体格差というか、神楽さんと関田さんはどのくらいの体格差がありますか?」
神楽さんはハハッと笑ってから、
「関田はチビだよ、だから俺が下手に背負い投げしたら受け身取れないで、気絶するかもなっ!」
すぐさま王茶先生が、
「柔道家は私怨で腕を振るっちゃいけませんよ!」
と言い、神楽さんはうんと強く頷き、
「分かっていますよ! 男・神楽銀介! そんなヤワなことはしません!」
と胸を張った。
さて、告白魔ということは分かったところで、これも裏取りとして、
「鯖井さんが十徳ナイフを保持しているって知っていますか?」
神楽さんは「マジかよ!」と言ってから、少し小声になり、
「それも知ってんだ、じゃああれは? 小百合が万年筆持ってんのは? あれも何か人を刺せそうだよなぁ」
「万年筆、ですか?」
「あぁさっき小百合から十徳ナイフとか聞いたんだよな、で、自分の武器になりそうな万年筆の話はしなかった、と。そりゃ怪しいなっ」
虎太郎お兄ちゃんが唸りながら、
「万年筆のペン先は、基本的には頻繁に取り換えるものではなく、洗浄しながら使うものですからね。警察が調べたら何か分かるかもしれませんし、またもしペン先が新品になっていたら怪しいですよね。ペン先には取り換えが必要になるケースというものがあって強い衝撃により破損したら、換えますからね」
王茶先生が相槌を打つように、
「強い衝撃、刺す動作とか……」
と言うと、神楽さんが、
「うへぇー、関田を刺すなんて女子は怖ぇなぁ」
と震える動作をしたところで、虎太郎お兄ちゃんが、
「何で犯人が女子だと断定したんですか? 早坂先生の可能性もあるのではないでしょうか」
と詰めるような声で言うと、神楽さんはプハァッと吹き出して笑ってから、
「俺なら投げるし、早坂も武術の経験あり。刺したけども目撃されたら、みたいなことよりも、確実に鈍器で一発落としてやるよ、男なら。チビ関田なんて一撃で落とす自信があるから、俺だったらこんな容疑者が絞られる時にやんないし。ということは女子なんじゃねぇの?」
虎太郎お兄ちゃんは頷きながら、
「そう理路整然と答えてくださったので言いますが、その通りだと思います。刺した箇所も背中寄りの脇腹と決して急所ではない、つまり人のことを攻撃することに抵抗がある人だと思います。仮に関田さんが座っているところを後ろから鋭利なモノで攻撃する場合、急所は後頭部や首の根元になるって、高校生なら知っているはずです。でもそれは避けたということですよね」
神楽さんはフフンと笑ってから、
「だよな。だから俺は高みの見物さ。でもまあ、こうやってまさか王茶選手がいるなんて。楽し過ぎる誤算だよ」
とは言え、女子生徒に犯行をなすりつけるために、そうやって刃物を使った可能性もある。
でも確かにこの神楽さんなら、いつでも関田さんに加害をするチャンスがありそうな感じがすることも事実だ。まあいつもの高校生活は知らないから、なんとも言えないけども。
いや待てよ、なすりつけたい女子生徒がいるという可能性もあるかもしれない。でも鋭利な刃物はどこに隠し持っていたのか問題は残るか。
というかどっちにしろ、今日十徳ナイフでも万年筆でもそれ以外でも持ってきている人なんていないのでは? ということは逆説的に今日持ってきている人は犯人じゃないということ?
いやいや裏をかいて堂々と鋭利な刃物になったモノを持ってきている可能性もある。あぁ、なんて人を疑うということは難しいことなんだ。
一時間くらい歩いたところで、山頂というか、小高い場所に着いた。
ただし場所が開(ひら)けているとは言い難く、いたるところにちょっとだけ休めるスポットが点在していて、それらは全てそれぞれ木々に囲まれていて見通しが悪いみたいな感じ。話によれば、そのピクニックの時には複数の班がいて、それぞれのスポットというか思い思いのスポットで休憩していたみたいで、どこのスポットに誰がいるかなんてことは意識的にスマホなどで連絡を取って共有しないと難しいらしい。
例えば、とあるスポットに被害者を匿名で呼び出しておき、後からそこに向かって刺したみたいな感じかな。あぁでも、その場合、被害者は呼び出した犯人を正面向いて待っているか。後ろ向いて待っていることなんてないか。匿名で呼び出されたら、人が来るほうを向いているもんだよね。それか呼び出した犯人がその場にいなかったらイタズラだと思ってすぐ帰りそうだし。流れ上、後ろを向いていたところを刺されたはずだから、そういうことではないのかもしれない。
ということは被害者はとあるスポットでたまたま後ろ向いて一人で座っていて、その時に刺されたみたいなこと? そう考えると無差別の可能性も出てくるかもしれない。容疑者をこの五人に絞っても意味が無いのかな?
難しい。とにかく難しい。容疑者がこの五人だけだとしても全然絞れない。警察が血痕を調べれば、すぐのような気もするけども、警察沙汰にはしたくないんだよなぁ。警察沙汰にしたら報酬ももらえないし。
とりあえず僕と虎太郎お兄ちゃんと王茶先生は別のスポットでまとまって話し合い、早坂先生には生徒の見張りをしてもらうことにした。
一応僕が脳内で考えた仮定をべらべら喋ったわけだけども、虎太郎お兄ちゃんもまだ決定打は無いみたいだ。
・【16 鋭利な刃物(4)】
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さてさて、探偵業の報酬も大切だけども、一番は事件が解決することだ。小百合さんがこの三人を張っていてくれている分には、別に……待てよ、そもそもこの小百合さんが犯人という可能性だってあるわけだ。こっちをミスリードさせようとしているかもしれない。
まあどっちにしろ、ここで小百合さんとは少し離れて、神楽さんのほうを見ることにした。
神楽さんはずっと嬉しそうに王茶先生と会話している。被害者は告白魔で女子生徒からは嫌われていると言っていたけども、その裏取りをしたい。
ちょっと口を挟むか、
「神楽さん、ちょっといいですか?」
すぐに神楽さんは「おっ」と言ってから、
「何だい? 柔道する気になったかい?」
「いや、あの、被害者の男子生徒は告白魔と聞いたんですが、それは本当ですか?」
「マジかよ、いつの間にそんな情報を」
「小百合さんから聞きました」
「まあそうだよな、関田は確かに告白魔だよ。あんな情けない男、俺が背負い投げで一発やってやりゃ良かったよ。刺されるのはさすがにやり過ぎだもんな」
すると虎太郎お兄ちゃんが、
「体格差というか、神楽さんと関田さんはどのくらいの体格差がありますか?」
神楽さんはハハッと笑ってから、
「関田はチビだよ、だから俺が下手に背負い投げしたら受け身取れないで、気絶するかもなっ!」
すぐさま王茶先生が、
「柔道家は私怨で腕を振るっちゃいけませんよ!」
と言い、神楽さんはうんと強く頷き、
「分かっていますよ! 男・神楽銀介! そんなヤワなことはしません!」
と胸を張った。
さて、告白魔ということは分かったところで、これも裏取りとして、
「鯖井さんが十徳ナイフを保持しているって知っていますか?」
神楽さんは「マジかよ!」と言ってから、少し小声になり、
「それも知ってんだ、じゃああれは? 小百合が万年筆持ってんのは? あれも何か人を刺せそうだよなぁ」
「万年筆、ですか?」
「あぁさっき小百合から十徳ナイフとか聞いたんだよな、で、自分の武器になりそうな万年筆の話はしなかった、と。そりゃ怪しいなっ」
虎太郎お兄ちゃんが唸りながら、
「万年筆のペン先は、基本的には頻繁に取り換えるものではなく、洗浄しながら使うものですからね。警察が調べたら何か分かるかもしれませんし、またもしペン先が新品になっていたら怪しいですよね。ペン先には取り換えが必要になるケースというものがあって強い衝撃により破損したら、換えますからね」
王茶先生が相槌を打つように、
「強い衝撃、刺す動作とか……」
と言うと、神楽さんが、
「うへぇー、関田を刺すなんて女子は怖ぇなぁ」
と震える動作をしたところで、虎太郎お兄ちゃんが、
「何で犯人が女子だと断定したんですか? 早坂先生の可能性もあるのではないでしょうか」
と詰めるような声で言うと、神楽さんはプハァッと吹き出して笑ってから、
「俺なら投げるし、早坂も武術の経験あり。刺したけども目撃されたら、みたいなことよりも、確実に鈍器で一発落としてやるよ、男なら。チビ関田なんて一撃で落とす自信があるから、俺だったらこんな容疑者が絞られる時にやんないし。ということは女子なんじゃねぇの?」
虎太郎お兄ちゃんは頷きながら、
「そう理路整然と答えてくださったので言いますが、その通りだと思います。刺した箇所も背中寄りの脇腹と決して急所ではない、つまり人のことを攻撃することに抵抗がある人だと思います。仮に関田さんが座っているところを後ろから鋭利なモノで攻撃する場合、急所は後頭部や首の根元になるって、高校生なら知っているはずです。でもそれは避けたということですよね」
神楽さんはフフンと笑ってから、
「だよな。だから俺は高みの見物さ。でもまあ、こうやってまさか王茶選手がいるなんて。楽し過ぎる誤算だよ」
とは言え、女子生徒に犯行をなすりつけるために、そうやって刃物を使った可能性もある。
でも確かにこの神楽さんなら、いつでも関田さんに加害をするチャンスがありそうな感じがすることも事実だ。まあいつもの高校生活は知らないから、なんとも言えないけども。
いや待てよ、なすりつけたい女子生徒がいるという可能性もあるかもしれない。でも鋭利な刃物はどこに隠し持っていたのか問題は残るか。
というかどっちにしろ、今日十徳ナイフでも万年筆でもそれ以外でも持ってきている人なんていないのでは? ということは逆説的に今日持ってきている人は犯人じゃないということ?
いやいや裏をかいて堂々と鋭利な刃物になったモノを持ってきている可能性もある。あぁ、なんて人を疑うということは難しいことなんだ。
一時間くらい歩いたところで、山頂というか、小高い場所に着いた。
ただし場所が開(ひら)けているとは言い難く、いたるところにちょっとだけ休めるスポットが点在していて、それらは全てそれぞれ木々に囲まれていて見通しが悪いみたいな感じ。話によれば、そのピクニックの時には複数の班がいて、それぞれのスポットというか思い思いのスポットで休憩していたみたいで、どこのスポットに誰がいるかなんてことは意識的にスマホなどで連絡を取って共有しないと難しいらしい。
例えば、とあるスポットに被害者を匿名で呼び出しておき、後からそこに向かって刺したみたいな感じかな。あぁでも、その場合、被害者は呼び出した犯人を正面向いて待っているか。後ろ向いて待っていることなんてないか。匿名で呼び出されたら、人が来るほうを向いているもんだよね。それか呼び出した犯人がその場にいなかったらイタズラだと思ってすぐ帰りそうだし。流れ上、後ろを向いていたところを刺されたはずだから、そういうことではないのかもしれない。
ということは被害者はとあるスポットでたまたま後ろ向いて一人で座っていて、その時に刺されたみたいなこと? そう考えると無差別の可能性も出てくるかもしれない。容疑者をこの五人に絞っても意味が無いのかな?
難しい。とにかく難しい。容疑者がこの五人だけだとしても全然絞れない。警察が血痕を調べれば、すぐのような気もするけども、警察沙汰にはしたくないんだよなぁ。警察沙汰にしたら報酬ももらえないし。
とりあえず僕と虎太郎お兄ちゃんと王茶先生は別のスポットでまとまって話し合い、早坂先生には生徒の見張りをしてもらうことにした。
一応僕が脳内で考えた仮定をべらべら喋ったわけだけども、虎太郎お兄ちゃんもまだ決定打は無いみたいだ。