最弱探偵

【17 鋭利な刃物(5)】

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・【17 鋭利な刃物(5)】
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 すると王茶先生が、
「被害者の、関田くんがポリス沙汰にすることって無いのかなっ」
 と言い出して、ポリス沙汰なんて言い方を教師がするなよ、と思ってしまった。
 虎太郎お兄ちゃんは「そうですね」と相槌を打ってから、
「王茶先生、校長先生にそのことをスマホで聞いてください」
 と言い、王茶先生はスマホを操作し始めた。ある程度歩いてきたけども、電波は入るみたいで、すぐに答えが出た。
「別にしないという話、だって。でもちょっと変だわねっ、自分を傷つけた犯人を知りたいと思わないなんてね」
 僕はふと、
「前回の事件みたいに、犯人に心当たりがあるんじゃないんですか? で、どういうわけか犯人をかばっている、と」
 王茶先生はふんふん頷きながら、
「確かに。というと前回みたいにやられたことを言いたくない相手ってことだわね。それが表沙汰になるとカッコ悪いみたいな」
 虎太郎お兄ちゃんはいつもより小さな声で、
「関田さんが相手を強請ろうと考えているかもしれません」
 王茶先生は目を見開いて、
「おちゃまー!」
 と叫んでから、すぐに手で口を塞いだ。
 じゃあ、
「お嬢様風の御嬢さんか、大人の早坂先生のどちらか、ということ?」
 虎太郎お兄ちゃんは少し困った顔をした。図星……なのかな? 王茶先生は強く頷き、
「その通りだわね!」
 と声を荒らげた。
 すると虎太郎お兄ちゃんが、
「王茶先生、そろそろサンドウィッチを配って、みんな一ヵ所に集まって食事にしましょう」
「あのパサパサなヤツねぇ! おちゃまー!」
 パサパサなヤツ、何でそんな粒立てるようなことを言うんだ。
 僕と王茶先生はしっとり系の、白い食パンで挟んだ普通のサンドウィッチを薦めたんだけども、虎太郎お兄ちゃんは頑なに「このフランスパン・スタイルのサンドウィッチにしましょう」と言って、そのサンドウィッチを選んだのだ。虎太郎お兄ちゃんってフランスパン・スタイルが好きだったんだ。新たな発見。
 虎太郎お兄ちゃんは、
「王茶先生、先に行っていてください」
 と言うと、王茶先生はサムアップしてから、
「おちゃまー」
 と上機嫌に、他の五人がいるほうへ手を広げて走っていった。
 そこで虎太郎お兄ちゃんが小声で、
「本当は言う相手逆なんですが……関田さんが告白魔ということで、強請るってお金だけではないのかもしれません。セクハラというか、そういうことかもという。龍の思考はヒントになるので、そういうことも頭に入れて考えていてください」
 なるほど! 強請るって確かにお金だけじゃないかも! でも! それは大人のほうの王茶先生に言うべきことだ!
 まあ僕は分かったからいいけども。どうやら虎太郎お兄ちゃんも王茶先生のことは幼いと思っているらしい。
 全員がいるスポットへ行くと、どうやら早坂先生が大きなレジャーシートを広げたらしく、神楽さん以外はそのレジャーシートの中に収まっていた。神楽さんは一人、イスとテーブルがあるほうに座っている。王茶先生はリュックサックから全員分のサンドウィッチを出して、手渡ししていった。
「では! いただきますだわね!」
 と王茶先生がデカい声をあげたのを合図に、みんな各々のペースで食べ始めた。僕たち三人は早坂先生のレジャーシートに座ったんだけども、神楽さんがすぐに、
「王茶選手はこっちに来てくださいよ!」
 と快活な声をあげて、王茶先生は「おちゃまー」と言いながら、そっちへ行った。
 さて、みんなの様子を観察しなきゃ。どこにヒントがあるか分からないから。
 小百合さんはフランスパン・スタイルのサンドウィッチがちょっと自分の口には大きいようで、どう食べようか思案しているよう。
 鯖井さんは早坂先生の右隣に座っていて、
「水筒の中身なんっすか! ちょっと飲ませてほしいっす!」
 と言えば、左隣の御嬢さんは早坂先生へ、
「サンドウィッチ食べる姿、カッコイイですぅ?」
 と、好意を隠そうとしない。対する早坂先生は爽やかな笑顔で、
「まずはみんな自分のサンドウィッチを食べようかっ」
 と答えている。小百合さんは鯖井さんの隣でずっと思案していると、鯖井さんが、
「あーしの十徳ナイフで切り分けるっすか?」
 と小百合さんに言って、小百合さんは一瞬ギョッとしてから「だだだ、大丈夫……」と言って、思い切ってかぶりついた。鼻にマヨネーズが豪快についた。
 すると鯖井さんが、
「めっちゃ鼻についてるっすよ、このこと日記に書くっすか? というか今からいつもの万年筆で書くっすか?」
「今日は万年筆持ってきていないので……」
 と小百合さんは少し言いづらそうに、そう言った。
 なるほど、鯖井さんは十徳ナイフを持ってきているし、小百合さんは万年筆が無い、と。この場合、あるほうが怪しいのか、ないほうが怪しいのか。
 すると虎太郎お兄ちゃんが、
「十徳ナイフ、少し見せて頂いてよろしいでしょうか?」
 鯖井さんは少し意地悪そうに、
「自己紹介の時、最弱とかもしかすると言ってなかったっすか? そんなヤツが十徳ナイフとか危ないっすよ~」
「最弱だからこそ、使い方やマナーは心得ています」
「おもしろ。最弱を自覚しているからこそね」
 そう言いながら、ポケットから楕円形の、表面は木製の十徳ナイフを虎太郎お兄ちゃんに渡した。
 虎太郎お兄ちゃんは、
「内容を見ていいですか」
「いいから渡しているっすよ、でもあれでしょ? このナイフでカス関田を刺したと思ってるんでしょ? 残念、そんなことはないっすよ~」
 虎太郎お兄ちゃんは熱心にナイフだけじゃなくて、栓抜きやハサミも見ている。確かにハサミも刺すことは可能だ。
 その時だった。急に鯖井さんが声をあげた。
「つか! 御嬢さんの水筒可愛い! それ昔流行ったティンクルナイトの水筒じゃん! うわー! 懐かし過ぎるっす! この前、これじゃなかったっすよね!」
 お嬢さんが使っている水筒にはアニメのような絵が描かれていて、何だか王茶先生くらい幼い子が使っている水筒って感じだった。
 御嬢さんはバッとすぐに隠しながら「あんま粒立てないでぇ?」と恥ずかしそうに言った。
 ふと、王茶先生のほうを見ると、サンドウィッチを一口食べては、すぐに水筒の水を飲み、どうやら王茶先生はちょっとパサパサな食べ物が苦手らしい。その時だった。
 王茶先生は水筒が空になったみたいで、水筒を目で覗いたのち、リュックサックからペットボトルのお茶を取り出して、今度はそれを飲み始めたのだ。いや水分欲し過ぎでしょ。トイレ、大丈夫かな。
 いやいや王茶先生の水分加減はいいとして、それにしても鯖井さんは本当によく喋る。いつの間にか早坂先生にマシンガントークを仕掛けて、御嬢さんもなんとか会話に入ろうと必死って感じ。
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