最弱探偵

【21 鋭利な刃物(9)】

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・【21 鋭利な刃物(9)】
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 王茶先生が叫んだ。
「おうちゃまー! 関田くんって強請るため黙っているんじゃなくて! 校長先生から口止め料をもらっているのー!」
 虎太郎お兄ちゃんはうんと頷き、
「多分、諸々の話を一切聞かずに全てを黙っていればお金を渡すみたいな形にしたんでしょう。その時に関田さんから“御嬢さんを呼び出した”的な話を聞けていれば僕たちのような探偵は雇わなかったんでしょうね」
 早坂先生は鼻で笑ってから、
「校長は何でも金で解決すればいいと思ってんだ。それに、関田からその話を聞いたとしても、御嬢の潔白を証明するために探偵を呼んだだろうな。バカだから。この高校と御嬢家とは、そういう関係だ」
 虎太郎お兄ちゃんは落ち着いた声で、こう言った。
「合点がいきました。僕たちのような、ほとんど実績の無い探偵が呼ばれた理由が、です」
 王茶先生は小首を傾げながら、
「おちゃまー、急遽で呼び出せる探偵だからじゃないの?」
 虎太郎お兄ちゃんは深呼吸してから、こう言った。
「本当は犯人は見つからないと思っていたんじゃないんですか。一応探偵を呼んだという実績だけ作って、あとはうやむやにするために、ほとんど実績のない探偵を選んだんだと思います。勿論急遽に対応出来る探偵という要素もあると思いますが、お金があるなら、もっと良い探偵も雇えたはずです」
 御嬢さんが声を震わせながら、
「だ・か・らぁ? 犯人は見つかっていないでしょぅっ? わたくしは犯人じゃないですわぁっ?」
 ずっと黙っていた神楽さんがこう言った。
「マジかよ、まだそんなこと言うんか。状況証拠は全部固まっているだろ」
 御嬢さんはキンキンとした耳障りな声で、
「状況だけですぅ? この世は推定無罪ぃぃいい! 物的証拠はゼロぉぉおお?」
 虎太郎お兄ちゃんは毅然とした態度で、
「僕、部外者なので、普通に警察沙汰にしてもいいですよ。一応この水筒がキーということは御嬢さんも認めているようですし、この水筒をよく調べたら、御嬢さんの持ち物だって証拠が出てきてもおかしくないですよ。さて、ここで自白して高校にもみ消してもらうか、僕が警察沙汰にするか、好きなほうを選んでください」
 御嬢さんは狂気の叫び声で、
「そうなったらぁぁぁあ! アンタたち報酬は払われないわよぉぉおおおおおおっ?」
 虎太郎お兄ちゃんは堂々と、
「大丈夫です。こんな違法なお金は元々受け取れないので」
 王茶先生は虎太郎お兄ちゃんの”お金を受け取らない宣言”で、少しシュンとしたことに内心笑いそうになってしまったけども、今は相当シリアスな場面なので顔を引き締めた。
 御嬢さんはぐぬぬと唇を噛んでから、叫んだ。
「わたくしがやりましたわぁっ? でもこれはいつも通り全部もみ消してもらえますから大丈夫ですわぁっ?」
 その刹那。
 早坂先生はスクッと立ち上がり、御嬢さんをビンタしたのだ!
「外道がいると周りも外道になる! ぼくはもっと真面目に生きたかった! ちゃんとした教師になりたかった!」
 早坂先生の叫び声で、この一件は幕を閉じた。
 その後、当然のようにこの事件はもみ消されて、虎太郎お兄ちゃんは報酬を受け取らなかった。
 ただし、この事件により、一つだけ変わったことがある。
 王茶高校柔道部に神楽さんが転校してきたのだ。神楽さんはこの高校に愛想をつかせて、王茶先生の誘いもあり。
 神楽さんは言う。
「柔道家たる者、正しく生きないとな。まあ告発が出来ないのマジ最悪だけども……」
 と悔しそうに。
 王茶先生は僕と虎太郎お兄ちゃんにこう宣言してくれた。
「おちゃまー! もう怪しい依頼は受けないだわねっ!」
 とは言え、王茶先生にそのフィルターがあるようには思えないけども。
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