最弱探偵
【22 泥棒は日常茶飯事(1)】
・
・【22 泥棒は日常茶飯事(1)】
・
今週の依頼はモノがよく盗まれるバレーボールクラブからで、その泥棒を捕まえてほしいという話だ。
依頼者はそのバレーボールクラブの経営陣ではなくて、そこに通う一般の生徒。大事な、思い出のキーホルダーを盗まれたので返してほしいということらしく、事前にその思い出のキーホルダーの形状などは教えてもらっている。
王茶先生は即座に『絶対取り返すわね!』と返信していたけども、僕はすぐに、王茶先生へ『多分メルカリで売られたと思います。だから取り返すことは出来ない可能性が高いです』と追加でメッセージを送ってくださいと伝えた。
王茶先生は肩を落としつつ、メッセージを送ったわけだけども、その依頼者は『それはそうですよね。でもまた被害に遭ったら嫌ですし、捕まえてください』と返ってきたので、依頼成立となった。
バレーボールクラブは学校とかじゃない、大きな体育館でやっているらしいんだけども、誰でも入れるらしい。見学自由というか。普通にセキュリティがガバガバらしいので外部犯の可能性も勿論ある、と。
でもさすがに部外者は目立つため、犯人はやっぱりバレーボールクラブに通っている人なんじゃないかな、というのが依頼者談。正直、僕もそう思う。盗みって基本的に接近戦なので、部外者が自分に何か近付いてきたなと思ったら、やっぱり違和感抱くし。信号待ちとかならまだしも、こういうバレーボールクラブ内というのは。
勿論依頼者から体育館の場所も教えて頂き、王茶先生が運転する車で直行かなと思っていると、思っていないか、案の定、途中の道の駅に寄った。
「おちゃまー! 道の駅は素敵な場所ー!」
そうバンザイしながら車から降りた王茶先生。さすがに幼過ぎる。
王茶先生はアホみたいな顔をしながら小走りで道の駅へ入っていった。小走りだったので、入るタイミングが同じになった他の人と『あは、いや、すいません、すいません』となっていた。入口がごちゃついていた。
僕とお兄ちゃんは歩いて道の駅に入ると、もう王茶先生は買い物カゴを持って、うろうろしていた。初めてのお遣いで大金を持たされた子供みたいに、ヨダレを垂らしそうな顔で歩いている。何が王茶”先生”なんだ。
道の駅は野菜売り場とお土産物売り場が一体化した、比較的こじんまりとした道の駅。乱雑に商品が売られていて、野菜棚の下段にはまるで捨てられているようにカボチャが売られていた。
ふと僕は上段の野菜が気になって、お兄ちゃんへ、
「このプチヴェールって野菜、何なんだろう?」
と聞いてみると、即座に王茶先生も近付いてきて、
「おちゃま……アタシも気になっていたの」
と、しっとり言ってきた。お兄ちゃんは淡々と、
「プチヴェールはケールと芽キャベツを掛け合わせた品種で、簡単に言えば結球しないキャベツです。葉がケールのように青々していますよね。でも苦みは無く、甘みのあるキャベツの特徴を併せ持っています。産地ではプチヴェールケーキなんて作っているらしいですね」
王茶先生は無言で、プチヴェールを二束手に取り、
「今日はこれをポトフで」
と呟いた。どうやら料理はちゃんと出来るらしい。まあ道の駅好きに料理出来ない人って多分いないけども。偏見だけど。
「おちゃま、普通のキャベツも買っておくんだわね。人参も買わなきゃ、タマネギも」
いやラインアップがポトフの野菜ということは分かるけども、王茶先生って家に野菜を買い込んでおくことしないのかな。人参やタマネギは家にあってもいいでしょ。
最後に、八百屋さんのコンソメという商品を買って、ハツラツとフィニッシュした王茶先生。
それにしても今が午前で、もう葉物野菜って買っていていいのかな。まあ売り場が冷蔵の場所じゃなかったからいいのかな。
道の駅を後にして、王茶先生が運転する車は体育館へついに直行した。感覚としては道の駅に直行して、そこから体育館に直行している感じ。ツー直行。
体育館に着いた。かなり大きな体育館で、時期になったら多分ここで地区大会の予選が行なわれるだろうな、といった感じ。大会の会場然としている。
王茶先生はリュックを背負って一緒に歩き出した。このリュックの中には何が入っているのだろうか。
大きな門のような玄関をくぐって、靴は一応ロッカーの中に入れ、三人で歩いて受付のようなところへ行った。そこで二,三言会話しただけで入場可となり、首からぶら下げるような入館証のようなモノも一切無く、中に入れてしまった。ずさんという言葉が浮かんだ。
王茶先生が連絡先へLINEすると、二人の女性がやって来た。
「こんにちは、依頼者の郁恵です。チームおうちゃまの方々ですよね」
とポニーテールのほうの女性がそう言った。
すると、隣に立っていた身体の小さいおかっぱの女性が、
「モー、探偵なんか雇わなくてもいいモー、それも自腹だなんてモー」
何かモーモー言っている……前世ウシ? よく見ると、ウシ柄のポーチを持っている。
そのウシ柄のポーチを持っている女性はこっちを疑うような目をしながら、
「こんな三バカトリオのような探偵よりも、あの、女子トイレのトイレットペーパー減り過ぎ事件を解決した丑三ちゃんを頼ればいいモー」
女子トイレのトイレットペーパー減り過ぎ事件……? 何か前もそんなこと言っていた人がいたような……どこもかしこも女子トイレのトイレットペーパーって減り過ぎているのか?
郁恵さんは、多分自分のことを言っていたのだろう丑三さんへ嗜めるように、
「丑三ったら、あれは結局ただ単に持ち帰る子がいたって話でしょ。そういうことじゃないでしょ、この泥棒多過ぎ体育館は」
「でモー、モー」
丑三さんは少し不快そうな顔をしている。
まあとにかく、
「郁恵さん、状況説明お願いします」
「分かりました」
郁恵さんから、このバレーボールクラブについて改めて教えてもらった。このバレーボールクラブは層が厚くて、一軍から四軍まである。そしてモノが盗まれるのは日常茶飯事、だということ。
・【22 泥棒は日常茶飯事(1)】
・
今週の依頼はモノがよく盗まれるバレーボールクラブからで、その泥棒を捕まえてほしいという話だ。
依頼者はそのバレーボールクラブの経営陣ではなくて、そこに通う一般の生徒。大事な、思い出のキーホルダーを盗まれたので返してほしいということらしく、事前にその思い出のキーホルダーの形状などは教えてもらっている。
王茶先生は即座に『絶対取り返すわね!』と返信していたけども、僕はすぐに、王茶先生へ『多分メルカリで売られたと思います。だから取り返すことは出来ない可能性が高いです』と追加でメッセージを送ってくださいと伝えた。
王茶先生は肩を落としつつ、メッセージを送ったわけだけども、その依頼者は『それはそうですよね。でもまた被害に遭ったら嫌ですし、捕まえてください』と返ってきたので、依頼成立となった。
バレーボールクラブは学校とかじゃない、大きな体育館でやっているらしいんだけども、誰でも入れるらしい。見学自由というか。普通にセキュリティがガバガバらしいので外部犯の可能性も勿論ある、と。
でもさすがに部外者は目立つため、犯人はやっぱりバレーボールクラブに通っている人なんじゃないかな、というのが依頼者談。正直、僕もそう思う。盗みって基本的に接近戦なので、部外者が自分に何か近付いてきたなと思ったら、やっぱり違和感抱くし。信号待ちとかならまだしも、こういうバレーボールクラブ内というのは。
勿論依頼者から体育館の場所も教えて頂き、王茶先生が運転する車で直行かなと思っていると、思っていないか、案の定、途中の道の駅に寄った。
「おちゃまー! 道の駅は素敵な場所ー!」
そうバンザイしながら車から降りた王茶先生。さすがに幼過ぎる。
王茶先生はアホみたいな顔をしながら小走りで道の駅へ入っていった。小走りだったので、入るタイミングが同じになった他の人と『あは、いや、すいません、すいません』となっていた。入口がごちゃついていた。
僕とお兄ちゃんは歩いて道の駅に入ると、もう王茶先生は買い物カゴを持って、うろうろしていた。初めてのお遣いで大金を持たされた子供みたいに、ヨダレを垂らしそうな顔で歩いている。何が王茶”先生”なんだ。
道の駅は野菜売り場とお土産物売り場が一体化した、比較的こじんまりとした道の駅。乱雑に商品が売られていて、野菜棚の下段にはまるで捨てられているようにカボチャが売られていた。
ふと僕は上段の野菜が気になって、お兄ちゃんへ、
「このプチヴェールって野菜、何なんだろう?」
と聞いてみると、即座に王茶先生も近付いてきて、
「おちゃま……アタシも気になっていたの」
と、しっとり言ってきた。お兄ちゃんは淡々と、
「プチヴェールはケールと芽キャベツを掛け合わせた品種で、簡単に言えば結球しないキャベツです。葉がケールのように青々していますよね。でも苦みは無く、甘みのあるキャベツの特徴を併せ持っています。産地ではプチヴェールケーキなんて作っているらしいですね」
王茶先生は無言で、プチヴェールを二束手に取り、
「今日はこれをポトフで」
と呟いた。どうやら料理はちゃんと出来るらしい。まあ道の駅好きに料理出来ない人って多分いないけども。偏見だけど。
「おちゃま、普通のキャベツも買っておくんだわね。人参も買わなきゃ、タマネギも」
いやラインアップがポトフの野菜ということは分かるけども、王茶先生って家に野菜を買い込んでおくことしないのかな。人参やタマネギは家にあってもいいでしょ。
最後に、八百屋さんのコンソメという商品を買って、ハツラツとフィニッシュした王茶先生。
それにしても今が午前で、もう葉物野菜って買っていていいのかな。まあ売り場が冷蔵の場所じゃなかったからいいのかな。
道の駅を後にして、王茶先生が運転する車は体育館へついに直行した。感覚としては道の駅に直行して、そこから体育館に直行している感じ。ツー直行。
体育館に着いた。かなり大きな体育館で、時期になったら多分ここで地区大会の予選が行なわれるだろうな、といった感じ。大会の会場然としている。
王茶先生はリュックを背負って一緒に歩き出した。このリュックの中には何が入っているのだろうか。
大きな門のような玄関をくぐって、靴は一応ロッカーの中に入れ、三人で歩いて受付のようなところへ行った。そこで二,三言会話しただけで入場可となり、首からぶら下げるような入館証のようなモノも一切無く、中に入れてしまった。ずさんという言葉が浮かんだ。
王茶先生が連絡先へLINEすると、二人の女性がやって来た。
「こんにちは、依頼者の郁恵です。チームおうちゃまの方々ですよね」
とポニーテールのほうの女性がそう言った。
すると、隣に立っていた身体の小さいおかっぱの女性が、
「モー、探偵なんか雇わなくてもいいモー、それも自腹だなんてモー」
何かモーモー言っている……前世ウシ? よく見ると、ウシ柄のポーチを持っている。
そのウシ柄のポーチを持っている女性はこっちを疑うような目をしながら、
「こんな三バカトリオのような探偵よりも、あの、女子トイレのトイレットペーパー減り過ぎ事件を解決した丑三ちゃんを頼ればいいモー」
女子トイレのトイレットペーパー減り過ぎ事件……? 何か前もそんなこと言っていた人がいたような……どこもかしこも女子トイレのトイレットペーパーって減り過ぎているのか?
郁恵さんは、多分自分のことを言っていたのだろう丑三さんへ嗜めるように、
「丑三ったら、あれは結局ただ単に持ち帰る子がいたって話でしょ。そういうことじゃないでしょ、この泥棒多過ぎ体育館は」
「でモー、モー」
丑三さんは少し不快そうな顔をしている。
まあとにかく、
「郁恵さん、状況説明お願いします」
「分かりました」
郁恵さんから、このバレーボールクラブについて改めて教えてもらった。このバレーボールクラブは層が厚くて、一軍から四軍まである。そしてモノが盗まれるのは日常茶飯事、だということ。