最弱探偵
【23 泥棒は日常茶飯事(2)】
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・【23 泥棒は日常茶飯事(2)】
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王茶先生はいぶかしげに、
「人はたくさんってことねー、おちゃまー」
するとお兄ちゃんが、
「モノが盗まれることが日常茶飯事ということは、同じ人が何度も盗みを行なっている可能性が高いですね。ですので、その盗み道具を今も持ち歩いているかもしれないです。確か事前の話によると、その盗まれるモノがほとんどキーホルダーや目印チャームなんですよね?」
郁恵さんはうんと頷いて、
「そうです。小物ですね」
お兄ちゃんは少し語気を強めて、
「アルミの、ボールチェーンですか」
「少なくてもわたしはそうでした。気付いたら切れていて」
「あれは普通に強く引っ張っただけで壊れますからね。そうやって本体を盗むということですね。ちなみにですが」
とお兄ちゃんが言ったところで丑三さんが、
「モー、普通の話ばっかだモー」
と言ったんだけども、すぐに僕が、
「何か気になることがあるの? お兄ちゃん」
と丑三さんの言葉をあえて無視するように、遮るように言うと、お兄ちゃんが、
「無くなるモノって全部アクリルキーホルダーですか。平面的なモノばかり盗まれるということですか」
郁恵さんは目を丸くしながら、
「すごい! その通りです! 何で分かったんですか!」
と言ったところで丑三さんが、
「そんなん最近の流行りがアクキーだからって話だモー」
と言ったわけだけども、お兄ちゃんは、
「そもそも郁恵さんが盗まれたモノがアクリルキーホルダーだったというお話ですし、単純に板状のほうが隠しやすいかなと思ったからです。でもまあ流行りもそうですから、そうなんでしょうね。丑三さんの言う通りです」
と言うと、丑三さんは鼻高々といった顔をした。
それにしてもこの丑三さん、どこまで一緒についてくるのだろうか。とりあえず話しながら体育館の外周を歩いているのだが、ずっといる。
体育館の中は行き届いた綺麗さで、最新鋭の設備が揃っているといった感じ。何もしていない僕からしたら少し寒かった。多分クーラーが利いているんだと思う。ボールが跳ねる音と掛け声の隙間から、空調の音が聞こえてくる。
その時だった。
「ヤバ! 何かリュック引っ張られたと思ったら、アクキー無い!」
なんと目の前で事件が発生したのだ。王茶先生が周りを見渡しながら、
「おちゃまー! みんな動かないでー! 盗みは物理的な行為だから、今近くにいる人が怪しいわよー!」
と声を上げたんだけども、全員無視して思い思いの行動をしている。
王茶先生は慌てて、
「おちゃまー! 泥棒捕まえに来た探偵よー!」
と両手を上げたんだけども、周りはちょっとこちらをチラリと見るだけで、誰も何か、無関心というかなんというか。
僕は郁恵さんのほうを見ると、郁恵さんが小声で「もういつものことなんだよね」と言って、これは状況的にやりたい放題だなと思ってしまった。
するとお兄ちゃんが、
「すみません。貴方。ちょっとだけポケットの中を見せてくれませんか」
と一人の生徒に話し掛けると、その生徒は溜息交じりに、
「はい、ポケットの中はこのタオルハンカチだけです。ポケットの中に手ぇ突っ込んでも大丈夫です」
と言って、もこもこなタオルハンカチを両手で持ってこちらに見せてきた。ちょっと大きめで、やたらもこもこしているタオルハンカチだ。
王茶先生が「あらま可愛いもこもこっ」と弾むような声で呟いた。お兄ちゃんはその生徒に対して、
「いや、大丈夫です。ポケットも大丈夫です」
と言ったところで、丑三さんがその生徒を指差しながら、
「でモー、田上っていっつも事件の傍にいるモー」
と言うと、田上と言われたタオルハンカチを見せてきた男子生徒は、
「偶然だろ。別に。気になるなら探っていいぞ」
丑三さんはフンッと鼻息を鳴らして、
「もう何度も探したモー」
「じゃあいちいち粒立てるなよ」
と田上さんは舌打ちしていなくなり、姿が見えなくなったところで丑三さんが悔しがるような顔をした。
僕は丑三さんへ、
「あの生徒、怪しいんですか?」
丑三さんは不満そうな顔で、
「絶対アイツが犯人だと思うモー。でも犯行現場は取り押さえられていないんだモー。手が早いんだモー。どこにも隠し持っていないんだモー」
「もしかすると、田上さんのことをずっと監視しているということですか?」
「結構だモー」
すると郁恵さんが少し自嘲気味に笑ってから、
「わたしも丑三も四軍で結構暇なんです。だからまあ泥棒捕まえて一旗揚げようと話を前にしていて」
丑三さんがすぐさま、
「余計なことは言わなくていいモー!」
と声を荒らげた。
僕はふと、
「田上さんも四軍なんですか?」
丑三さんはムッとしながら、
「丑三と郁恵は三.五軍だモー、田上と一緒にしないでほしいモー。ちゃんと掃除とかも田上と違ってしているモ」
それはもはや雑用をやってしまっている丑三さんと郁恵さんのほうが良くないんじゃ……とは言わず、
「四軍って基本的に何をしているんですか?」
するとすぐに郁恵さんが、
「基本は掃除ですね」
と答えて、じゃあもう何でバレーボールクラブに通っているんだ、と思った。
でも日本ってそういうところあるよね。海外ではランクを下げてでも自分が一番になれるクラブへ入るって言うけども。日本人ってとにかく大きなクラブに入って、一緒にいる感覚を味わうんだよね。そんなランクを上げるチャンスなんてないのに。いやいや、この思考は完全に失礼だ。ちゃんと探偵業に邁進しなければ。
お兄ちゃんが郁恵さんへ、
「田上さんが犯人だという自信はどのくらいありますか」
と聞いたわけだけども、それはそもそも丑三さんが勝手に思っているだけでは、と思っていると、郁恵さんは、
「多分田上が犯人だと思います」
と郁恵さんもそう思っていて、何だかちょっとビックリしてしまった。
慎重な性格そうな郁恵さんまで、そんなことを言うなんて。
・【23 泥棒は日常茶飯事(2)】
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王茶先生はいぶかしげに、
「人はたくさんってことねー、おちゃまー」
するとお兄ちゃんが、
「モノが盗まれることが日常茶飯事ということは、同じ人が何度も盗みを行なっている可能性が高いですね。ですので、その盗み道具を今も持ち歩いているかもしれないです。確か事前の話によると、その盗まれるモノがほとんどキーホルダーや目印チャームなんですよね?」
郁恵さんはうんと頷いて、
「そうです。小物ですね」
お兄ちゃんは少し語気を強めて、
「アルミの、ボールチェーンですか」
「少なくてもわたしはそうでした。気付いたら切れていて」
「あれは普通に強く引っ張っただけで壊れますからね。そうやって本体を盗むということですね。ちなみにですが」
とお兄ちゃんが言ったところで丑三さんが、
「モー、普通の話ばっかだモー」
と言ったんだけども、すぐに僕が、
「何か気になることがあるの? お兄ちゃん」
と丑三さんの言葉をあえて無視するように、遮るように言うと、お兄ちゃんが、
「無くなるモノって全部アクリルキーホルダーですか。平面的なモノばかり盗まれるということですか」
郁恵さんは目を丸くしながら、
「すごい! その通りです! 何で分かったんですか!」
と言ったところで丑三さんが、
「そんなん最近の流行りがアクキーだからって話だモー」
と言ったわけだけども、お兄ちゃんは、
「そもそも郁恵さんが盗まれたモノがアクリルキーホルダーだったというお話ですし、単純に板状のほうが隠しやすいかなと思ったからです。でもまあ流行りもそうですから、そうなんでしょうね。丑三さんの言う通りです」
と言うと、丑三さんは鼻高々といった顔をした。
それにしてもこの丑三さん、どこまで一緒についてくるのだろうか。とりあえず話しながら体育館の外周を歩いているのだが、ずっといる。
体育館の中は行き届いた綺麗さで、最新鋭の設備が揃っているといった感じ。何もしていない僕からしたら少し寒かった。多分クーラーが利いているんだと思う。ボールが跳ねる音と掛け声の隙間から、空調の音が聞こえてくる。
その時だった。
「ヤバ! 何かリュック引っ張られたと思ったら、アクキー無い!」
なんと目の前で事件が発生したのだ。王茶先生が周りを見渡しながら、
「おちゃまー! みんな動かないでー! 盗みは物理的な行為だから、今近くにいる人が怪しいわよー!」
と声を上げたんだけども、全員無視して思い思いの行動をしている。
王茶先生は慌てて、
「おちゃまー! 泥棒捕まえに来た探偵よー!」
と両手を上げたんだけども、周りはちょっとこちらをチラリと見るだけで、誰も何か、無関心というかなんというか。
僕は郁恵さんのほうを見ると、郁恵さんが小声で「もういつものことなんだよね」と言って、これは状況的にやりたい放題だなと思ってしまった。
するとお兄ちゃんが、
「すみません。貴方。ちょっとだけポケットの中を見せてくれませんか」
と一人の生徒に話し掛けると、その生徒は溜息交じりに、
「はい、ポケットの中はこのタオルハンカチだけです。ポケットの中に手ぇ突っ込んでも大丈夫です」
と言って、もこもこなタオルハンカチを両手で持ってこちらに見せてきた。ちょっと大きめで、やたらもこもこしているタオルハンカチだ。
王茶先生が「あらま可愛いもこもこっ」と弾むような声で呟いた。お兄ちゃんはその生徒に対して、
「いや、大丈夫です。ポケットも大丈夫です」
と言ったところで、丑三さんがその生徒を指差しながら、
「でモー、田上っていっつも事件の傍にいるモー」
と言うと、田上と言われたタオルハンカチを見せてきた男子生徒は、
「偶然だろ。別に。気になるなら探っていいぞ」
丑三さんはフンッと鼻息を鳴らして、
「もう何度も探したモー」
「じゃあいちいち粒立てるなよ」
と田上さんは舌打ちしていなくなり、姿が見えなくなったところで丑三さんが悔しがるような顔をした。
僕は丑三さんへ、
「あの生徒、怪しいんですか?」
丑三さんは不満そうな顔で、
「絶対アイツが犯人だと思うモー。でも犯行現場は取り押さえられていないんだモー。手が早いんだモー。どこにも隠し持っていないんだモー」
「もしかすると、田上さんのことをずっと監視しているということですか?」
「結構だモー」
すると郁恵さんが少し自嘲気味に笑ってから、
「わたしも丑三も四軍で結構暇なんです。だからまあ泥棒捕まえて一旗揚げようと話を前にしていて」
丑三さんがすぐさま、
「余計なことは言わなくていいモー!」
と声を荒らげた。
僕はふと、
「田上さんも四軍なんですか?」
丑三さんはムッとしながら、
「丑三と郁恵は三.五軍だモー、田上と一緒にしないでほしいモー。ちゃんと掃除とかも田上と違ってしているモ」
それはもはや雑用をやってしまっている丑三さんと郁恵さんのほうが良くないんじゃ……とは言わず、
「四軍って基本的に何をしているんですか?」
するとすぐに郁恵さんが、
「基本は掃除ですね」
と答えて、じゃあもう何でバレーボールクラブに通っているんだ、と思った。
でも日本ってそういうところあるよね。海外ではランクを下げてでも自分が一番になれるクラブへ入るって言うけども。日本人ってとにかく大きなクラブに入って、一緒にいる感覚を味わうんだよね。そんなランクを上げるチャンスなんてないのに。いやいや、この思考は完全に失礼だ。ちゃんと探偵業に邁進しなければ。
お兄ちゃんが郁恵さんへ、
「田上さんが犯人だという自信はどのくらいありますか」
と聞いたわけだけども、それはそもそも丑三さんが勝手に思っているだけでは、と思っていると、郁恵さんは、
「多分田上が犯人だと思います」
と郁恵さんもそう思っていて、何だかちょっとビックリしてしまった。
慎重な性格そうな郁恵さんまで、そんなことを言うなんて。