最弱探偵
【05 天音龍(あまね・りゅう)と天音虎太郎(あまね・こたろう)(5)】
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・【05 天音龍(あまね・りゅう)と天音虎太郎(あまね・こたろう)(5)】
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青田先生が僕と虎太郎お兄ちゃんを見るなり、
「今、クラスメイトたちは教頭先生に見てもらってグラウンドに出ている。誰もいない間に虎太郎くん、この事件を解決してくれ」
僕は即座に、
「僕もいていいですか?」
と聞くと、王茶先生がうんと頷いてから、
「勿論よ!」
とサムアップした。そこまで明るくする必要も無いけども、王茶先生は根っから明るい先生で、王茶真央という本名から生徒には”おうちゃま”と呼ばせている。
虎太郎お兄ちゃんはまずあの女子が座っていたイスをまじまじと見ながら、顔を近付けると、青田先生が、
「それウンコかも」
と言って、ウンコのはずないでしょう、大の大人がウンコの解像度低過ぎ、と思っていると、虎太郎お兄ちゃんが、
「これは、魚卵のいくら、ですね」
と言い、王茶先生は急にデカい声で、
「おちゃまー! そんなことー!」
と叫んだ。王茶先生が時折叫ぶ”おちゃまー!”とは、王茶先生の感情が高ぶった時に出る意味の無い言葉だ。
王茶先生はその流れでそのまま、
「何でいくらなのっ! 何でいくらって分かったの!」
虎太郎お兄ちゃんは少し恥ずかしそうに、
「いや、なんせ私は最弱なので、いろんなことを知っていないとダメなんです」
青田先生は小首を傾げながら、
「でも何故いくらが」
虎太郎お兄ちゃんは理路整然と、
「もしかするとこれをやられてしまった女子は誰かからの人気が低いのではないでしょうか。多分イヤガラセとしてのソレだと思います」
僕は「あ!」と思いながら、
「そう言えば一部の男子たちが嫌っていたような!」
虎太郎お兄ちゃんはうんと頷いてから、
「ではその中に魚屋さんの息子はいませんでしたか? 例えこのいくらが腐ったモノだとしても、いくらは高級品なので誰でも手に入れられるモノではありません。ということは、いくらをいくらでも手に入れることが出来る環境ということです」
それに対して王茶先生は少し吹き出して笑った。多分駄洒落になっていたからだ。そんなことより僕は、
「魚屋さんの息子、あの時にその女子を非難していた竹内くんがそうって言っていたかも」
青田先生は「そうそう」と口をついてから、
「竹内は確かに魚屋竹内の息子だ」
虎太郎お兄ちゃんは即座に、
「では竹内くんのバッグや机を覗きましょう。中にいくらを入れていたタッパのようなモノがあれば正解です。いくらはぬめりがあるので、そのようなタッパがあれば、ぬめりがついているはずです」
青田先生と王茶先生はすぐさま竹内くんのバッグや机をガサゴソすると、いくらが入っていたと思われるタッパを見つけ出した。
すると虎太郎お兄ちゃんは、
「では、どうせまだ小学生なので詳しいことは知らないでしょうから、いくらの卵をDNA鑑定すると言って、自白させましょう」
青田先生は「おぉ!」と驚いてから、
「なるほど! DNA鑑定という言葉は最近の小学六年生なら分かるだろうから、そこを突くわけだな!」
王茶先生は手をバンザイさせながら、
「おちゃまー! すごい作戦よー!」
と嬉しそうにした。というか、虎太郎お兄ちゃんは本当にすごい。もう解決に導いてしまった。
すると王茶先生がこう言った。
「やっぱり虎太郎くんは私立の中学に通うべきだったのよー! アタシも王茶高校付属中学校に勧めたのにー!」
王茶高校付属中学校って確か県下ナンバーワンの私立の進学校で、全寮制だったはず。というか王茶って王茶先生と同じ字では? まあこの辺はこの苗字が多いから偶然だろうけども。
青田先生は何故か少し苦笑いをしながら、
「まあ学校はどこだろうと、私立の中学校だって行けたはずなのにな。でも親御さんが面倒な手続きは嫌とか言ってなぁ」
まさかこんなところでもお母さん・お父さんの障壁があったなんて。
虎太郎お兄ちゃんは掠れ笑いをしながら、
「いやいや、私は最弱なんで」
僕は虎太郎お兄ちゃんがこうやって自嘲気味に”最弱なんで”と言うことが本当に苦手だ。
だから、
「虎太郎お兄ちゃん、探偵で週末稼いで、自分のお金で良い高校に行こうよ。お金をこっちで出せばお母さんもお父さんも納得せざる得ないと思う!」
すると王茶先生が矢継ぎ早に、
「おちゃまー! それいいわねー! ならばアタシが毎週末、車出してあげるわよー!」
青田先生は王茶先生に対してちょっとギョッとしたけども、すぐに、
「いやそれはアリかもな。王茶先生もついているなら、とりあえずは安心だ」
虎太郎お兄ちゃんは申し訳無さそうに、
「いやいや、そんなワガママ出来ませんし、そんなに上手くいきませんよ」
と言うんだけども、王茶先生は熱心に、
「いやいや! 虎太郎くん! これはやるべきだわっ! おうちゃま応援しちゃう!」
王茶先生は自認も”おうちゃま”である。
青田先生はうんうん頷きながら、
「いや本当にやるべきだよ、虎太郎くんはもっと良い高校に入って、大学に行くべきだ」
ここはもう一押しだと思って、
「僕も絶対そのほうがいいと思う! 虎太郎お兄ちゃんはもっと勉強出来る世界へ行くべきだよ!」
すると虎太郎お兄ちゃんは俯きがちに、
「ゴメン」
と言うと、少し泣きそうな声で、
「やっぱり高校に行きたい」
と言ったので、僕は間髪入れず、
「じゃあ週末探偵やろうよ! それで稼ごうよ!」
王茶先生は小躍りしながら、
「おちゃまー! すごくいいわねー! 探偵のSNS管理もアタシがするし、車も出すし、親御さんがケチつけてきたら、学校の仕事って嘘つくわー!」
青田先生は同調するように、
「確かに。虎太郎くんの親御さんは学校って言うと引き下がりがちだからな。それがいい」
虎太郎お兄ちゃんは震える声で、
「私、高校行っていいのかな……」
僕はすぐに大きな声で、
「行っていい!」
と言ったんだけども、王茶先生も青田先生も声がユニゾンしていた。
そこから虎太郎お兄ちゃんと僕と王茶先生の三人での週末探偵をスタートさせたのであった。
・【05 天音龍(あまね・りゅう)と天音虎太郎(あまね・こたろう)(5)】
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青田先生が僕と虎太郎お兄ちゃんを見るなり、
「今、クラスメイトたちは教頭先生に見てもらってグラウンドに出ている。誰もいない間に虎太郎くん、この事件を解決してくれ」
僕は即座に、
「僕もいていいですか?」
と聞くと、王茶先生がうんと頷いてから、
「勿論よ!」
とサムアップした。そこまで明るくする必要も無いけども、王茶先生は根っから明るい先生で、王茶真央という本名から生徒には”おうちゃま”と呼ばせている。
虎太郎お兄ちゃんはまずあの女子が座っていたイスをまじまじと見ながら、顔を近付けると、青田先生が、
「それウンコかも」
と言って、ウンコのはずないでしょう、大の大人がウンコの解像度低過ぎ、と思っていると、虎太郎お兄ちゃんが、
「これは、魚卵のいくら、ですね」
と言い、王茶先生は急にデカい声で、
「おちゃまー! そんなことー!」
と叫んだ。王茶先生が時折叫ぶ”おちゃまー!”とは、王茶先生の感情が高ぶった時に出る意味の無い言葉だ。
王茶先生はその流れでそのまま、
「何でいくらなのっ! 何でいくらって分かったの!」
虎太郎お兄ちゃんは少し恥ずかしそうに、
「いや、なんせ私は最弱なので、いろんなことを知っていないとダメなんです」
青田先生は小首を傾げながら、
「でも何故いくらが」
虎太郎お兄ちゃんは理路整然と、
「もしかするとこれをやられてしまった女子は誰かからの人気が低いのではないでしょうか。多分イヤガラセとしてのソレだと思います」
僕は「あ!」と思いながら、
「そう言えば一部の男子たちが嫌っていたような!」
虎太郎お兄ちゃんはうんと頷いてから、
「ではその中に魚屋さんの息子はいませんでしたか? 例えこのいくらが腐ったモノだとしても、いくらは高級品なので誰でも手に入れられるモノではありません。ということは、いくらをいくらでも手に入れることが出来る環境ということです」
それに対して王茶先生は少し吹き出して笑った。多分駄洒落になっていたからだ。そんなことより僕は、
「魚屋さんの息子、あの時にその女子を非難していた竹内くんがそうって言っていたかも」
青田先生は「そうそう」と口をついてから、
「竹内は確かに魚屋竹内の息子だ」
虎太郎お兄ちゃんは即座に、
「では竹内くんのバッグや机を覗きましょう。中にいくらを入れていたタッパのようなモノがあれば正解です。いくらはぬめりがあるので、そのようなタッパがあれば、ぬめりがついているはずです」
青田先生と王茶先生はすぐさま竹内くんのバッグや机をガサゴソすると、いくらが入っていたと思われるタッパを見つけ出した。
すると虎太郎お兄ちゃんは、
「では、どうせまだ小学生なので詳しいことは知らないでしょうから、いくらの卵をDNA鑑定すると言って、自白させましょう」
青田先生は「おぉ!」と驚いてから、
「なるほど! DNA鑑定という言葉は最近の小学六年生なら分かるだろうから、そこを突くわけだな!」
王茶先生は手をバンザイさせながら、
「おちゃまー! すごい作戦よー!」
と嬉しそうにした。というか、虎太郎お兄ちゃんは本当にすごい。もう解決に導いてしまった。
すると王茶先生がこう言った。
「やっぱり虎太郎くんは私立の中学に通うべきだったのよー! アタシも王茶高校付属中学校に勧めたのにー!」
王茶高校付属中学校って確か県下ナンバーワンの私立の進学校で、全寮制だったはず。というか王茶って王茶先生と同じ字では? まあこの辺はこの苗字が多いから偶然だろうけども。
青田先生は何故か少し苦笑いをしながら、
「まあ学校はどこだろうと、私立の中学校だって行けたはずなのにな。でも親御さんが面倒な手続きは嫌とか言ってなぁ」
まさかこんなところでもお母さん・お父さんの障壁があったなんて。
虎太郎お兄ちゃんは掠れ笑いをしながら、
「いやいや、私は最弱なんで」
僕は虎太郎お兄ちゃんがこうやって自嘲気味に”最弱なんで”と言うことが本当に苦手だ。
だから、
「虎太郎お兄ちゃん、探偵で週末稼いで、自分のお金で良い高校に行こうよ。お金をこっちで出せばお母さんもお父さんも納得せざる得ないと思う!」
すると王茶先生が矢継ぎ早に、
「おちゃまー! それいいわねー! ならばアタシが毎週末、車出してあげるわよー!」
青田先生は王茶先生に対してちょっとギョッとしたけども、すぐに、
「いやそれはアリかもな。王茶先生もついているなら、とりあえずは安心だ」
虎太郎お兄ちゃんは申し訳無さそうに、
「いやいや、そんなワガママ出来ませんし、そんなに上手くいきませんよ」
と言うんだけども、王茶先生は熱心に、
「いやいや! 虎太郎くん! これはやるべきだわっ! おうちゃま応援しちゃう!」
王茶先生は自認も”おうちゃま”である。
青田先生はうんうん頷きながら、
「いや本当にやるべきだよ、虎太郎くんはもっと良い高校に入って、大学に行くべきだ」
ここはもう一押しだと思って、
「僕も絶対そのほうがいいと思う! 虎太郎お兄ちゃんはもっと勉強出来る世界へ行くべきだよ!」
すると虎太郎お兄ちゃんは俯きがちに、
「ゴメン」
と言うと、少し泣きそうな声で、
「やっぱり高校に行きたい」
と言ったので、僕は間髪入れず、
「じゃあ週末探偵やろうよ! それで稼ごうよ!」
王茶先生は小躍りしながら、
「おちゃまー! すごくいいわねー! 探偵のSNS管理もアタシがするし、車も出すし、親御さんがケチつけてきたら、学校の仕事って嘘つくわー!」
青田先生は同調するように、
「確かに。虎太郎くんの親御さんは学校って言うと引き下がりがちだからな。それがいい」
虎太郎お兄ちゃんは震える声で、
「私、高校行っていいのかな……」
僕はすぐに大きな声で、
「行っていい!」
と言ったんだけども、王茶先生も青田先生も声がユニゾンしていた。
そこから虎太郎お兄ちゃんと僕と王茶先生の三人での週末探偵をスタートさせたのであった。