最弱探偵

【06 一時的な記憶喪失により(1)】

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・【06 一時的な記憶喪失により(1)】
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 王茶先生が運転する車に乗って、依頼主の元へ向かっている。
 とある高校の生徒に巻き起こった事件で、クラスのガキ大将的存在の男子生徒がいつの間にか道路の歩道で倒れていたという事件だ。
 話によると、その男子生徒には前後の記憶が無く、犯人は誰だか分からないという話だ。
 王茶先生は道の駅巡りが趣味なので、現場に直行せず、近くの道の駅に寄った。
「おちゃまー! 野菜がいっぱい! 地産! 地産!」
 ハイテンションで、まるで子供のようにハシャぐ王茶先生。王茶先生は二十三歳の新卒二年目の女性教師で、身長は170センチと高いんだけども、何だか年齢よりも幼く感じることがある。
 そもそも依頼主前に道の駅に寄るのも何か変だし、だからって運転は王茶先生なので文句は言えない。
 僕は特に道の駅で見たいモノは無いし、虎太郎お兄ちゃんは王茶先生が虎太郎お兄ちゃんの袖を引っ張っているので、三人一緒に行動している。
 王茶先生は目を輝かせながら、
「まだ初夏にも早いのにカボチャいっぱいよー! 生産者の名前が書いてあるわねー! あら、このカボチャ! 生産者のところdaichi.sakamotoってカッコつけてるわね!」
 虎太郎お兄ちゃんは頷きながら、
「今はハウスモノも充実していますからね」
「これ変わった形ー! 軽度のひょうたんみたいだわっ!」
 王茶先生が手に取ったのは、確かにひょうたんみたいだけども、どちらかと言うと、フラスコのような形の野菜だった。
 虎太郎お兄ちゃんはそれを見ながら、
「バターピーナッツという、比較的切りやすいカボチャですね。加熱すると柔らかくなって、カボチャのスープに適しています。だからレンジ加熱してから切ると調理しやすいですね」
「おちゃまー! 本当虎太郎くんは博学ねー!」
「そんな……最弱だからモノを知っていないと競り負けるだけです」
 全然虎太郎お兄ちゃんは最弱じゃないし、むしろ知識最強なのになぁ。まあそう言っても、のれんに腕押しで響かないからもうあえて否定することもしないけども。
 そんな時だった。
 王茶先生のポケットからスマホの音が鳴り、
「ちょい電話よー」
 と言いながら、出入り口に向かって歩き出したので、僕はなんとなしについていくと、王茶先生は少し小声で、
「大丈夫よー、王茶高校に入ってもらうためにいろいろするわよー、パパ心配しないでー」
 と言っていて、僕は聞いちゃいけないこと聞いちゃったと思い、王茶先生にバレないように踵を返し、ずっとカボチャを見ていた虎太郎お兄ちゃんのもとへ戻った。
 というか、え、王茶先生ってやっぱり王茶高校と関係あるの? というか、もしかするとお父さんが王茶高校の理事長とか?
 つまりは優秀な生徒を高校に招き入れるために、王茶先生は一生懸命手伝ってくれているということ……? どうしよう……いや、待てよ。
 別にどうしようとか無いな。渡りに船というかウィン―ウィンというか、何も僕側が困ることは無い。むしろ魂胆がハッキリ分かって安心するくらいだ。
 何で王茶先生がこんな肩入れしているか不明で少し怖かったけども、そうと分かれば何も不快に思うことは無い。最高の味方じゃないか。
 僕も王茶先生も県下ナンバーワンの進学校(王茶高校)に入れたいという気持ちは完全一致だ。本当にそれでいいわけだ。王茶先生が直々に査定して、王茶高校側に進言してくれれば、もしかしたら学費は最小限で済むかもしれないし。
 そんなことを考えていると、王茶先生が何故かツヤッツヤの顔で戻って来て、
「おちゃまー! すっごく大丈夫よー!」
 と明るく言い放った。何が大丈夫なのかは一切分からないけども、まあ大丈夫ということは良いことだから、あまり気にしないようにしよう。
 その後、早取りのブルーベリーや、時期最終盤のイチゴなどを物色し、王茶先生は折り菜という、要は菜の花のような野菜を買って、車のトランク内に既に設置されていたクーラーボックスにそれを入れて、また車は発進した。
「おちゃま、おちゃまー」
 王茶先生は上機嫌に鼻歌を歌いながら車を運転している。運転は一切荒くなく、法律もマナーも守っているので、安心感はある。
 ついに依頼主がいる高校に着き、僕と虎太郎お兄ちゃんと王茶先生で校門をくぐって、中に入ってすぐの受付のような場所に顔を出し、王茶先生が、
「事件の依頼を受けたチームおうちゃまです。こちらがそのアカウントで」
 と言った時に僕は正直ビックリしてしまった。まさや、いや『まさか』と『もしや』が一緒になって人名みたいになってしまった。とにかくまさか、この探偵チーム名を”チームおうちゃま”にしていたなんて。自分がメインみたいなツラをしていたなんて。そんなこと思いもしなかった。
 向こうの、高校側のお方も、
「チームおうちゃまですね、お待ちしておりました。では首から証明書をぶら下げてもらって、突き当りの階段のぼってすぐ右の職員室へお入りください」
 と、チームおうちゃまという名前を本当にある言葉みたいに言っている。いや本当にある言葉なんだろう。王茶先生が勝手に作り出したわけだけども。
 でも虎太郎お兄ちゃんはそれをすんなり受け入れているような顔をしていて、そりゃまあ虎太郎お兄ちゃんは自分自分という人間じゃないけど。それならチームドラゴンズとかにしても良かったのになぁ、と思ってしまった。僕の名前が龍だけに。でもこれじゃ王茶先生と同レベルか。
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