幸せの苦痛
7章「夏の終わりと別れ」

1話「何気ない一言」

美桜との関係は、ずっと同じではいられなかった。
付き合い始めた頃は、何をしていても楽しかった。
一緒にいるだけで嬉しかったし、少し話せるだけでも幸せだった。
けれど、時間が経てば、お互いの気持ちも、考え方も、少しずつ変わっていく。
それは、どちらかが悪いということではなかったのかもしれない。
僕たちはまだ中学生で、恋愛のことも、人との付き合い方も、何もかもが手探りだった。
相手を大切にしたいと思っていても、どうすればいいのか分からない。
心配しているつもりが、相手には違う意味で伝わってしまう。
冗談のつもりで言ったことが、思っていた以上に相手を傷つけてしまう。
僕も、そんな失敗をした。
ある日、僕は何気なく言葉を口にした。
自分では、そこまで深く考えていなかった。
悪意があったわけでもなかった。
でも、その言葉は美桜を傷つけてしまった。
彼女がどんな気持ちになったのか。
そのときの僕には、すべてを理解できていなかった。
ただ、彼女の様子がいつもと違うことだけは分かった。
「ごめん」
僕は謝った。
けれど、言葉にして謝れば、すぐに元どおりになれるわけではなかった。
傷つけるつもりがなかったことと、相手が傷つかなかったことは、同じではない。
その当たり前のことを、僕は身をもって知ることになった。
どうすればよかったのだろう。
何を言えば、彼女の気持ちを分かってあげられたのだろう。
考えても、答えは見つからなかった。
僕は、彼女を大切に思っていた。
だからこそ、自分の言葉で関係が変わってしまったことが、苦しかった。
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