幸せの苦痛
2章「新しい日々と君との出会い」

1話「ソフトテニス部」

中学校生活が始まってしばらくすると、部活動を決める時期がやってきた。
運動部に入るか、文化部に入るか。
友達と同じ部活にするか、それとも自分の興味があるものを選ぶか。
悩んだ末に、僕が選んだのはソフトテニス部だった。
理由は単純だった。
楽しそうだったから。
最初の練習は、想像していたよりもずっと大変だった。
ラケットの握り方も、ボールの打ち方も、思いどおりにはいかない。
空振りをして、変な方向にボールを飛ばして、先輩に教えてもらう。
それでも、ボールがきれいに相手のコートへ返った瞬間は嬉しかった。
「今の、結構よかったじゃん!」
同級生の大地が声を上げる。
「いや、たまたまだって」
「たまたまでも入ったんだからいいだろ!」
そんな会話をしながら、僕たちは何度もボールを打った。
部活には、楽しいことばかりがあったわけじゃない。
練習がきつい日もあったし、失敗して落ち込む日もあった。
先輩や同級生との間で、言葉にしづらい居心地の悪さを感じることもあった。
ちょっとした冗談のつもりなのかもしれない。
相手には悪気がなかったのかもしれない。
けれど、何度も似たようなことが重なると、笑って流すことにも疲れてしまう。
それでも僕は、部活を辞めたいとは思わなかった。
一緒に練習する仲間がいた。
少しずつ上達していく自分がいた。
そして何より、テニスをしている時間そのものが好きだった。
苦しいことがあっても、楽しいことまで手放したくなかった。
あの頃の僕は、そうやって毎日を過ごしていた。
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