その溺愛、予想外につき。

*第2話 はじめての試験

レッスン室に入った瞬間、空気が変わった気がした。

白い壁。
大きな鏡。
隅に積まれたスピーカー。
磨かれた床には、窓から差しこむ朝の光がまっすぐ伸びている。

何もかもが眩しくて、場違いなところに来てしまった気がした。

私は思わず足を止める。
その後ろで、ショートカットの女性スタッフが振り返った。

「何してるの。入って」

「は、はいっ」

慌てて返事をして、ぺこりと頭を下げる。
こんな時でもついそうしてしまう自分が情けない。

部屋の奥にはピアノの前に椅子が置かれ、簡単なミキサー機材が並んでいた。
本格的なスタジオというほどではないけれど、歌もダンスも確認できる設備は揃っているらしい。

黒崎さんが淡々と言う。

「まず確認しておくけど、これは正式なオーディションじゃない」

私はこくんと頷く。

「天宮涼の代役が成立するかどうか、最低限の可能性を見るだけだ。期待しすぎないで」

「……はい」

期待なんて、したらだめだ。
そう思うのに、胸の奥では小さな希望が勝手に灯ろうとする。

涼はレッスン室の入口近くで立ち尽くしていた。
入ってきてはいるけれど、こっちには近づかない。
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