その溺愛、予想外につき。
けれど真白さんは、そのまま言葉を続けた。

「ただし、完全にゼロでもない」

顔を上げる。

真白さんの目は相変わらず厳しい。
でも、その奥にほんの少しだけ迷いのようなものが見えた。

「歌は荒い。でも声の質感は近い。ダンスは論外に近いけど、振りを覚える速さは悪くない」

「……え」

思わず小さく声が漏れる。

「何より、本人の動きを近くで見てきた癖がある。立ち方や視線の流し方に、少しだけ涼が残ってる」

その言葉に、涼が目を見開く。
私も信じられなかった。
ただ見ていただけなのに、そんなものまで残るんだ。

真白さんは淡々と続ける。

「もちろん、今のままじゃ人前には出せない。でも、時間がまったくない中で、他に候補を探してゼロから入れるよりは現実的かもしれない」

黒崎さんが静かに頷いた。

「つまり」

「条件つきなら、試す価値はある」

その瞬間、胸が大きく跳ねた。

本当に。
本当に、少しだけでも可能性があるんだ。

「ただし」

真白さんの声がぴんと空気を引き締める。

「これは温情じゃない。厳密には、正式加入でも代役決定でもない。ごく短期間の仮参加。そこを勘違いしないで」

「はい……!」

返事をした声が裏返りそうになる。
でも、止められなかった。
嬉しさと緊張が一気に押し寄せて、胸の奥が熱い。

涼がやっと口を開いた。
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