その溺愛、予想外につき。
案内された部屋は、レッスン室とはまるで空気が違っていた。

白い壁に大きな鏡。
細長いテーブルの上には、ブラシやヘアピン、スプレー缶、何本ものメイク道具がきれいに並んでいる。
隅には衣装ラックまで置かれていて、ここが人を舞台用に作り上げる場所なのだとすぐにわかった。

私は部屋の入り口で立ち止まる。
なんだか、本当に後戻りできないところまで来てしまった気がした。

「入って」

真白さんに促されて、私はそろそろと中へ入る。

「椅子に座って。まず髪をまとめるから」

「は、はい」

鏡の前の椅子に腰かけると、目の前に映った自分と視線がぶつかった。
さっきまでレッスン室にいた時と同じ顔。
少し赤い頬、不安げな目、ふわふわと肩に落ちる自分の髪。

まだ、ただの私だ。

真白さんは後ろに回ると、手早く私の髪に触れた。
慣れた手つきでまとめられていく感覚に、身体がこわばる。

「髪、量多いわね」

「す、すみません……」

「だから謝らなくていいってさっきから」

呆れた声に、また少ししゅんとなる。
すると隣で黒崎さんが苦笑した。
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