その溺愛、予想外につき。
「自分で持ってみて」
言われるまま、両手で受け取る。
軽い。
思ったよりずっと軽いのに、胸に乗る重さはひどく大きかった。
「……これで、私」
最後まで言えなかった。
でも真白さんはちゃんと意味を汲み取ったみたいに、静かに言う。
「これで、あなたは天宮涼に近づく」
その言葉に、鼓動がどくんと大きく鳴る。
逃げたいわけじゃない。
でも、簡単にうなずけるほど軽くもない。
しばらく動けずにいる私を見て、涼が一歩近づいた。
「ふわ――」
呼びかけかけて、兄ははっとしたように口をつぐむ。
そして少しだけ困った顔で笑った。
「……無理しなくていい」
優しい声だった。
昔からずっとそうだ。
お兄ちゃんは、いつだって私が無理している時に気づいてしまう。
その優しさに甘えたくなる。
やっぱり無理かもって言ってしまいたくなる。
けれど、ここでそれを言ったら、きっと兄は止める。
そして私は、兄のあの苦しそうな顔をまた見ることになる。
それだけは嫌だった。
私は小さく首を振る。
「ううん。やる」
自分に言い聞かせるみたいに、もう一度。
「……やるよ」
涼は何か言いたそうだった。
でも結局、何も言わずに目を伏せた。
私は鏡の中の自分を見つめる。
不安そうな顔。
弱そうな目。
全然、アイドルなんて向いてない女の子。
だけどその子が今から、兄の夢を背負うんだ。
私はそっとウィッグを真白さんに渡した。
真白さんは無言で受け取ると、慣れた手つきで私の頭にかぶせていく。
ひやり、とした感触が頭を包んだ。
前髪の位置を整えられ、耳元の髪を少し引き出される。
襟足を指先で整えられたあと、真白さんが少し離れた。
「……顔、上げて」
言われて、私はゆっくりと鏡を見る。
そこに映っていたのは、知らない誰かだった。
黒い短髪。
少しだけ中性的な輪郭。
見慣れたはずの自分の目なのに、雰囲気が違う。
髪ひとつでこんなに変わるなんて思わなかった。
思わず、息が止まる。
言われるまま、両手で受け取る。
軽い。
思ったよりずっと軽いのに、胸に乗る重さはひどく大きかった。
「……これで、私」
最後まで言えなかった。
でも真白さんはちゃんと意味を汲み取ったみたいに、静かに言う。
「これで、あなたは天宮涼に近づく」
その言葉に、鼓動がどくんと大きく鳴る。
逃げたいわけじゃない。
でも、簡単にうなずけるほど軽くもない。
しばらく動けずにいる私を見て、涼が一歩近づいた。
「ふわ――」
呼びかけかけて、兄ははっとしたように口をつぐむ。
そして少しだけ困った顔で笑った。
「……無理しなくていい」
優しい声だった。
昔からずっとそうだ。
お兄ちゃんは、いつだって私が無理している時に気づいてしまう。
その優しさに甘えたくなる。
やっぱり無理かもって言ってしまいたくなる。
けれど、ここでそれを言ったら、きっと兄は止める。
そして私は、兄のあの苦しそうな顔をまた見ることになる。
それだけは嫌だった。
私は小さく首を振る。
「ううん。やる」
自分に言い聞かせるみたいに、もう一度。
「……やるよ」
涼は何か言いたそうだった。
でも結局、何も言わずに目を伏せた。
私は鏡の中の自分を見つめる。
不安そうな顔。
弱そうな目。
全然、アイドルなんて向いてない女の子。
だけどその子が今から、兄の夢を背負うんだ。
私はそっとウィッグを真白さんに渡した。
真白さんは無言で受け取ると、慣れた手つきで私の頭にかぶせていく。
ひやり、とした感触が頭を包んだ。
前髪の位置を整えられ、耳元の髪を少し引き出される。
襟足を指先で整えられたあと、真白さんが少し離れた。
「……顔、上げて」
言われて、私はゆっくりと鏡を見る。
そこに映っていたのは、知らない誰かだった。
黒い短髪。
少しだけ中性的な輪郭。
見慣れたはずの自分の目なのに、雰囲気が違う。
髪ひとつでこんなに変わるなんて思わなかった。
思わず、息が止まる。