その溺愛、予想外につき。
「落ち込まない」

真白さんに指摘されて、はっとした。

「顔に出てる。今あなたがやるのは比べて沈むことじゃなくて、盗めるだけ盗むこと」

その言葉に、私は背筋を伸ばす。

「……はい」

「その返事も柔らかい。もっと短く」

「……うん」

「違う」

「えっ」

思わず素が出て、黒崎さんが吹き出しそうになる。
真白さんはこめかみを押さえた。

「先が思いやられるわね」

「す、すみません……」

「それ」

まただめ。

部屋の空気が少しだけ和んだのが、逆に悔しい。
私は本気なのに、全然うまくできない。

でもその時、不意にドアの外から笑いをこらえるような声が聞こえた。

「……っふ」

びくっとして振り返る。
少しだけ開いたドアの隙間から、見慣れた茶色の髪がのぞいていた。

「るか!」

真白さんの声が低くなる。

るかは観念したようにひょこっと顔を出した。
でも全然反省していない笑顔だ。

「ごめんごめん。通りかかったら聞こえてきて」

「盗み聞きしてたの?」

「してた」

悪びれなさすぎる。

私は恥ずかしくて、一気に顔が熱くなった。
さっきの失敗、聞かれてたんだ。
あんな変な返事の仕方まで。

るかは肩を震わせながら笑う。

「新しい涼くん、思ったより大変そう」

「……笑わないでください」

思わず口を尖らせると、るかは一瞬きょとんとして、それからまた笑った。

「ほら、それ。そういう言い方、すごく可愛い」

また可愛いって言った。

私はますますむっとしてしまう。
でも男の子としてそれは変だと気づいて、慌てて表情を引き締めた。

るかはそれを見て目を細める。
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