その溺愛、予想外につき。
「足、もう少し外。重心が後ろに逃げてる」

「こう?」

「違う。もっと自然に」

あさひが実際に動いて見せる。
その動きは大きくて、力強い。
同じ振りなのに、私とはまるで別のものに見えた。

「真似して」

私はあさひの動きを目で追いながら、何度も繰り返す。

一回。
二回。
三回。

少しずつ、身体が振りを覚えていく。

「……できた」

思わず呟くと、あさひは一瞬だけ黙った。

「まだ遅いけど」

「褒めてないじゃん」

つい素の口調で返してしまう。

すると、あさひは目を丸くしてから、にやりと笑った。

「今の方がいい」

「え?」

「その喋り方。そっちの方が涼っぽい」

胸がひやりとする。

でも、あさひはそれ以上追及しなかった。
ただ、少しだけ楽しそうに笑っている。

「よし。もう一回最初から」

容赦がない。

音楽が流れ、私は何度も踊った。

間違えて、止まって、やり直す。
足が痛くなって、息が上がって、それでも立ち位置から離れない。

そのたびに、あさひが指摘する。

「腕が低い」
「目線、下げない」
「ターンのあと、すぐ前を見る」

れんは少し離れた場所から、必要な時だけ短く助言をくれた。

「肩の力を抜け」
「次の動きを先に見ると遅れない」

しおんは私がつまずくたびに、さりげなくカウントを口にしてくれた。

「五、六、七、八。次は左だよ」

そしてるかは、私が限界になりそうな時にだけ、隣で小さく声をかけた。
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