その溺愛、予想外につき。

*第8話 知っているのは、俺だけ

ふわりを休憩室に残して、俺は急いで廊下を走った。

冷却シートと、簡単な救急セット。
それから、念のために温かい飲み物も買う。

戻る途中、ポケットの中のスマホが震えた。

画面には、涼からのメッセージ。

《ふわり、ちゃんと休ませてる?》

思わず苦笑する。

《今、休憩室。足を痛めたから手当てする》

そう返すと、すぐに既読がついた。

《ありがとう。頼む》

短い文章。
でも、その裏にある心配は十分すぎるほど伝わってきた。

俺がふわりの秘密を知ったのは、数日前のことだった。

正確には、涼から直接聞いた。

『妹が代わりに出る』

最初は、冗談かと思った。

けれど、涼は真剣な顔で続けた。

『ふわりは、俺よりずっと覚悟を決めてる』

その言葉を聞いた時から、俺はふわりを知っている。

彼女が男装していることも。
涼の代わりにステージへ立とうとしていることも。
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