その溺愛、予想外につき。
私は足を止めかけた。

「え?」

るかは何でもないことのように、前を向いている。

「涼と同じになる必要なんてないよ」

その言葉が、胸の奥にゆっくり染み込んでいく。

同じにならなくていい。
ずっと誰かに言ってほしかった言葉だった。

私は今まで、兄に近づこうとしていた。
兄の代わりになるために、兄の話し方を真似して、兄の立ち方を真似して、兄のように振る舞おうとしていた。

でも、本当はずっと怖かった。

どれだけ頑張っても、私はお兄ちゃんにはなれない。

「……でも、私が涼の代わりをしないと」

ぽつりとこぼす。

るかは何も言わず、私の横顔を見た。

「お兄ちゃんが、ステージに立てないから」

「うん」

「だから、私が頑張らなきゃいけないの」

「うん」

「なのに、全然できなくて……みんなに迷惑かけて」

言葉が止まらなくなった。

一度こぼれた本音は、もう戻せなかった。

「本当は、すごく怖い。失敗するのも怖いし、ばれるのも怖い。私が女の子だって知られたら、ここにいられなくなるかもしれないし……」

そこまで言って、私ははっとした。
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