その溺愛、予想外につき。
しまった。

自分から言ってしまった。

隣を見ると、るかは驚いた様子もなく、ただ静かに私を見ていた。

「……今の、聞かなかったことにして」

慌ててそう言うと、るかはゆっくり首を振った。

「無理」

「るか……」

「聞かなかったことにはできない」

冷たい言い方ではなかった。
むしろ、とてもやさしかった。

るかは、少しだけ私の前に回り込む。

「でも、誰にも言わない」

「……本当に?」

「本当」

「どうして?」

「言わないって決めたから」

あまりにも迷いのない返事だった。

私はるかを見つめる。

街灯の下で、るかの表情がいつもより大人びて見えた。

「私が女の子でも?」

「うん」

「お兄ちゃんの代わりでも?」

「うん」

「途中で、もう無理ってなっても?」

「その時は、無理って言えばいい」

「みんなに迷惑をかけても?」

るかは、少しだけ眉を寄せた。

「迷惑をかけるのが嫌なら、俺たちだってもっと早く助けるべきだった」

「でも……」

「ふわり」

名前を呼ばれて、息が止まる。

るかは、今度は誤魔化さなかった。

「俺は最初から、君がふわりだって知ってる」

夜の音が、遠くなった。

車の走る音も。
風の音も。
街のざわめきも。

全部、聞こえなくなった気がした。
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