その溺愛、予想外につき。
▷▶︎▷第一章

*第1話 代わりの嘘。

翌日の朝、空気はひどく重たかった。

家を出る前から、私の心臓はずっと落ち着かない。
制服ではなく、私服のワンピースに薄いカーディガンを羽織っているだけなのに、まるで何かの審判を受けに行くみたいな気分だった。

隣を歩くお兄ちゃん――涼も、ほとんど喋らない。
いつもなら、こんな沈黙が続けば何かひとつくらい冗談を言ってくれるのに、今日はそれもない。

事務所の入ったビルは、ガラス張りでやけに綺麗だった。
朝の光を反射してきらきらしているのに、今の私にはその眩しさが少し怖い。

自動ドアをくぐった瞬間、涼が小さな声で言った。
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