その溺愛、予想外につき。
「妹さんも一緒なんだね」

その一言に、喉がきゅっと締まる。
ここからだ。
ここで言わなきゃ始まらない。

涼が言葉を探すみたいに少し黙ってから、口を開く。

「……昨日の話なんですけど」

「うん」

「その、妹が……どうしても話したいことがあるって」

黒崎さんの眉がわずかに動く。
怪訝そうな表情。
当然だ。
私だって、逆の立場ならそうなる。

「話したいこと?」

問われて、私はぎゅっとスカートの裾を握った。
今さら足が震える。
それでも、顔を上げるしかなかった。

「……あの、私」

声がうまく出ない。
緊張で喉がからからだ。

涼が横で小さく息をのむ気配がした。
でも、助けてはくれない。
これは私が、自分で言わなきゃいけないことだから。

私はもう一度息を吸って、はっきりと言った。

「私、お兄ちゃんの代わりをやりたいです」

数秒、しんと空気が止まった。

黒崎さんは何も言わない。
ガラス張りの向こうを歩いていたスタッフの足音だけが、やけに遠く聞こえる。

やがて、黒崎さんが静かに聞き返した。

「……代わり?」

「はい」

「天宮涼の?」

「はい」

答えるたびに、自分でも無茶なことを言っていると痛いほどわかる。
それでも、言葉を止めたくなかった。
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