極東4th
---
『あわわわわ…』

 早紀の、奇声が聞こえた。

 鎧の内部から反響するように、真理に伝わってくる。

 相変わらずの、緊張感の足りなさだ。

 しかし、それは彼女がステルスを解いたということで。

 用意した医者と、自分の判断で戻していいという二つの条件を、早紀が飲んだのだろう。

 うるさい。

 ステルスを解けとは言ったのは確かだが、やはりつながるとそう思わずには言われない。

 本人が、いろいろ混乱しているせいか、伝わってくる音もこんがらがっていたのだ。

 意味不明の、しかし現状に関する単語だけが、鎧の中を飛び交う。

 おっと。

 早紀がうるさいということは、敵さんには自分が見えているということだ。

 突然現れた真理に、一瞬驚いて止まっていた重症の天族が、はっきりと目的を持って剣を掲げて突進してきている。

 斜め下方では、別の火花が散り始めていた。

「なんだ…その力はっ!」

 動くのもやっとのはずの真理の敵は、しかし、剣と共に問いを発する。

 見えない彼の能力に、問わずにいられなかったのか。

 フッ。

 敵の質問に、答えるわけがない。

 敵に贈るものは、答えなどではなく、苦痛だと決まっているのだから。

 剣を受け流し、真理は左手の指で自分の刀の表面を、強くなぞった。

 鋭い指の動きに、多くの氷の棘が刀からへし折られ宙を舞う。

 真理は──冷気を呼んだ。

「貫け…」

 冷気に乗った氷の棘が。

 金の鎧に突き刺さってゆく。

「我が名はカシュメル…貴様は、先の大空蝕には参戦したのか?」

 宙で崩れ行く敵に、真理は名乗り、そして問いかけた。

 ああ。

 そして、気づいた。

 敵に問いかけなどしても無駄だ、と。

 さっき、自分がそう思ったではないか。

 敵に与えるものは──苦痛のみ。

 真理は。

 最後の一撃を、振り下ろした。
< 102 / 273 >

この作品をシェア

pagetop