極東4th
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 ガシャンッ。

 そうして早紀は、鎧から解放される。

 真理の指先によって。

 その後、何とも言えない時間を味わうのだ。

 今日の魔族の勝利を喜び合うでもなく、傷つかなかったことに安堵するでもなく。

 ただ早紀は、1stの男の言った言葉を、頭の中に反芻してしまうのである。

 青と、戦うことに。

 それを聞いた瞬間、早紀は反射的にステルスを起動させていたようだった。

 自分の思考が、真理にダダ漏れになるのを防ぎたかったのだ。

 だから、多分。

 彼に、早紀の考えたことは、バレて、いな──

「お前の父親は……」

 思考にかぶるように、真理の言葉が乗せられる。

 考えていたことと、あながち遠くはない内容に、早紀は胸を冷たくさせた。

 ステルスは、間に合わなかったのだろうか、と。

「お前の父親は……魔族だ」

 だが、想像よりも結論は、はるかにシンプルだった。

 え?

「お前の両親は…どちらも魔族だ、と言っている」

 いつも通りの冷えた目が、早紀の目に飛び込んでくる。

 いや。

 自分が、はっと顔を上げて、彼の目を見てしまったのだ。

 う、うそ。

 そう、真理の目の中に嘘を探そうとした。

 彼の目を真正面から見上げるなんて、普通の自分ならありえないのだから。

 だが。

 真理の瞳は、まったく揺れない。

 いつも通りの色のまま、早紀を映している。

「お前の能力が、魔族に効くのは…」

 さっき、冷気を共有している時には、あんなに心地よかったというのに。

 いまはもう、彼女の心を冷やすだけで。

「それは…単なる突然変異だ」

 身体の内側にいる時の彼は、早紀の隙間を埋めてくれたというのに。

 いまはもう──遠い真理に戻っていた。
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