極東4th
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 零子は──早紀を見つけられるようになったのか。

 学校で、気づけば彼女が、自分を見ている気がするのだ。

 他の人にも気づかれているのかと思ったが、彼女以外は相変わらずで。

 クラスでは、いつも通りの空気女だった。

 登校中や、廊下、昼休み、帰宅中。

 ほんのわずかな隙間隙間で、確実に早紀は見られていたのだ。

「私に…何かご用ですか?」

 ある昼休みに、思い切って彼女に聞いてみた。

「いいえ」

 すると、零子は首を横に振るではないか。

 な、ないんだ。

 即答加減に、早紀は困ってしまった。

 それなら見るな、とは言えない性格なのだ。

 うーん、それじゃ。

「私のこと…いつもちゃんと見えてます?」

 質問を変えてみた。

 早紀は、あまり上手に能力を使いこなせている気はしない。

 しかし、零子以外の様子を見る限りは、普段から挨拶のように発動しているらしい。

 その事実を、周囲の人間の目で確認してみようとしたのだが。

 瞬間的に、零子の表情が険しくなった気がした。

 返答はない。

 長い、沈黙。

 え、えっと。

 いけないことを聞いてしまったのかと、早紀が居心地悪く、しかし立ち去るきっかけを掴めないでいると。

 零子は──ゆっくりゆっくりと、息を吐いた。

「あなたは…」

 何かを言いかける、赤い唇。

 予鈴が鳴り始める。

 午後の授業まで、もうすぐだ。

 その音の中。

 零子は、長いまつ毛を伏せた。

「あなたは…変です」

 その美しい顔とは裏腹に。

 言葉は、静かに早紀に突き刺さったのだった。
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