極東4th
「何だ?」

 夢の中。

 早紀が、じーっと鎧の男を見ていたので、怪訝な声を返されてしまった。

「ううん…鎧さんの方が、よっぽどいい男に見えてきた」

 はぁーっとため息をつきながら、彼女は本音を漏らす。

 毎晩、こうして会っているが、鎧の男は決して早紀を疎んじない。

「そりゃ、光栄だ」

 ニヤつく声も、慣れればなんてことない。

 氷柱みたいな真理の声に比べたら、いっそ温かく感じるほど。

「なんかもう…ずっと、こっちにいられればいいのに」

 起きて、真理に会うのが憂鬱だ。

 平日は学校へ行くために、必ず同じ車なのだから。

「………」

 早紀の言葉に、鎧は少し黙り込む。

 何のコメントもないことが意外で、彼を見やると。

「先代の、魔女の話をしてやろうか?」

 出てきた言葉は、少し噛みあわないもの。

 これまでの話の流れで、先代が出てくるのは奇妙だった。

 しかし、興味はある。

 こくこくと頷くと、鎧はその兜を反射させた。

「いい…女だったぜ。極上のたっぷりの魔力、極上の能力」

 ゆっくり、ゆっくりとした言葉。

 思い出している声だが──それは、何だか奇妙な思い出し方に感じた。

「先代の魔女は、オレと契約を失敗した…意味が分かるか?」

『いやよ! 死にたくないわ!』

 夢の中に反響する、絶叫。

 それに、早紀はびくっと身を固くしてしまった。

 すぐそこに、先代の魔女とやらが、いるように錯覚してしまったのだ。

「かくして魔女は、この世界に閉じ込められ…死ぬまでオレと暮らしましたとさ」

『出して! 私をここから出して!! 痛いっ! 痛いわ!!』

 苦痛による叫び。

 その苦痛は、早紀の知っているものだった。

 つい先日、同じような悲鳴をあげさせられたのだから。

「昔話は、こんなとこか…で、何の話をしていたっけな?」

 ニヤつく声で、早紀に向き直る鎧は──とても意地の悪そうな声を出したのだった。
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