極東4th
 目がさめた早紀は、ベッドの上で少しぼんやりした。

 不信感の募る真理から、鎧の男へと伸ばしかけた頼ろうとする手を、彼は意地悪に笑いながら拒んだのだ。

「おかあさん…おはよう」

 声が沈む。

 起きて、自分が独りであるという現実を噛み締めると、こんなうだつの上がらない声になるのか。

 ずっと、この家に住みながらも、早紀は独りだった。

 だから、その事には慣れていたし、普通だったはずなのに。

 多分。

 こうしている今も、早紀が真理や鎧の男と、つながってしまったせいだ。

 彼女は、独りではなくなったのだ。

 なのに、その二人のどちらとも、早紀の心は本当につながらないままで。

 その事実が、余計に「独り」を際立たせてしまうのだろう。

 起きて。

 ああ。

 今日が、土曜日だと気づく。

 学校はお休みで、どこにも行かなくてもいい。

 逆に言えば、どこに行ってもいい。

 早紀はこれまでの人生の多くを、この屋敷に引きこもってきた。

 一人で外に行きたいと思えなかったし、出てはいけない雰囲気があったのだ。

 いまにして思えば、魔族だとか、鎧のイケニエだとか、空から降る涙の色だとか、そういう事情があったのだろうが。

 でかけ、よっかな。

 母親の写真の前で、ふと、魔がさした。

 こんな気分のまま、この屋敷に引きこもっていたくなかったのだ。

 よし。

 出よう。

 憑き魔女は──自分の衝動に、身を任せることにした。

 そして、クローゼットを開ける。

 自分で服を買い揃えない早紀は、そこが多くの黒で占められていることを知るのだ。

 そうだ。

 服を買いに行ってみよう。

 早紀は、おでこに絆創膏を貼った。

 ぺたり。
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