極東4th
「みっともないところを…」
何とか立ち上がった男は、建物の壁を支えにするように手をつく。
大きい。
早紀は、見上げる目をまばたかせた。
2メートル近く、あるのではないだろうか。
それに、倒れたのが不思議なくらい、しっかりした身体だった。
健康そうな、陽に焼けた肌。
髪が長いのだけが、少し違和感があるか。
「あ、いえ…」
魔族の中で暮らしてきた早紀には、まぶしいほどの人だった。
「あ…靴…」
はっと、我に返って、早紀は足元を指差した。
拾ってきたそれは、まだ地面に置いてあるまま。
「あ、ああ…」
男も、それに気付いたようで、無防備な片足を伸ばそうとした。
が。
まだ、身体がつらいのだろう。
その大きな上半身が、ぐらりと傾ぐ。
あっと。
反射的に、早紀は支えようと手を伸ばした。
あっ、あっ!
彼の身体に、触れた手が。
吸盤でもついているかのように、服ごしに吸い付いたのだ。
あーっ。
身体の奥底を、一瞬でかきまわされるような錯覚。
何かが、触れた手から彼に向かって引き上げられる。
な、なに?
手が。
さっきまでの、吸盤ぶりが嘘のように離れる頃。
逆に、早紀は彼に身体を支えられていた。
「おどろいたな…」
頭の上で、感嘆の声があがる。
「君は、先祖がえりかい? こんな子に、こっちで会えるなんて」
早紀の目の前に、赤茶色の髪が流れる。
言われている言葉の意味なんかは、分からない。
ただ――早紀は、慌てて彼から逃れていた。
片方の靴のまま、しかし、彼はまっすぐ立っている。
「よかったら、名前を…」
投げられかけた言葉から、早紀は逃げ出したのだった。
何とか立ち上がった男は、建物の壁を支えにするように手をつく。
大きい。
早紀は、見上げる目をまばたかせた。
2メートル近く、あるのではないだろうか。
それに、倒れたのが不思議なくらい、しっかりした身体だった。
健康そうな、陽に焼けた肌。
髪が長いのだけが、少し違和感があるか。
「あ、いえ…」
魔族の中で暮らしてきた早紀には、まぶしいほどの人だった。
「あ…靴…」
はっと、我に返って、早紀は足元を指差した。
拾ってきたそれは、まだ地面に置いてあるまま。
「あ、ああ…」
男も、それに気付いたようで、無防備な片足を伸ばそうとした。
が。
まだ、身体がつらいのだろう。
その大きな上半身が、ぐらりと傾ぐ。
あっと。
反射的に、早紀は支えようと手を伸ばした。
あっ、あっ!
彼の身体に、触れた手が。
吸盤でもついているかのように、服ごしに吸い付いたのだ。
あーっ。
身体の奥底を、一瞬でかきまわされるような錯覚。
何かが、触れた手から彼に向かって引き上げられる。
な、なに?
手が。
さっきまでの、吸盤ぶりが嘘のように離れる頃。
逆に、早紀は彼に身体を支えられていた。
「おどろいたな…」
頭の上で、感嘆の声があがる。
「君は、先祖がえりかい? こんな子に、こっちで会えるなんて」
早紀の目の前に、赤茶色の髪が流れる。
言われている言葉の意味なんかは、分からない。
ただ――早紀は、慌てて彼から逃れていた。
片方の靴のまま、しかし、彼はまっすぐ立っている。
「よかったら、名前を…」
投げられかけた言葉から、早紀は逃げ出したのだった。