極東4th
彼は、伊瀬と名乗った。
置き去りにした、靴を拾いに戻る道すがら、の話だ。
ひょこひょこと、大きな身体が横を歩く。
警戒を解いた訳ではないのだが、早紀の目には、とても悪い人には見えなくて。
それに、変な現象は起きはしたが、害はなかった。
ということは、真反対といわれる天族ではないはずだ。
「あの…恩人って」
早紀は、彼を助けたつもりはなかった。
確かに、様子を見ようとは思ったが、彼女は医者でもなんでもないのだ。
治してやることなど、出来るはずがない。
しかし、いま彼はさっき倒れていたのが嘘のように、生気に溢れている。
「ああ…そうか、自分では分からないのか」
伊瀬は、困った笑みを浮かべた。
説明しづらいようだ。
「君の力をね…少し分けてもらったんだよ…すまない、非常事態だったから」
ひょこ、ひょこ。
片方の靴のせいで、足をつく高さが微妙に違うため、ぎこちない歩き方。
ん? ん?
その縦に揺れる影を見ながら、早紀は眉間を寄せていた。
早紀の力といえば、魔力だ。
その魔力を受けても、平気ということは。
「もしかして…同族の方ですか?」
おそるおそる、彼女はそれを口にしてみた。
魔族にしては、まったく毒がないと思ったが、早紀だって魔族である。
そう考えると、異端児が他にいてもおかしくないではないか。
「え? 君、お仲間かい?」
驚きながらも、何かを嗅ぎ取るように、伊瀬はすぅっと息を吸った。
魔族の匂いとか、するものだろうか。
「そういえば…ほんの少し? そうか、お仲間だったのか」
明るく、崩れる表情。
本当に嬉しそうだ。
早紀も、嬉しくなってきた。
冷たいばかりの魔族の中にも、こんな太陽みたいな人がいるのだと思うと、心が軽くなるのだ。
だが。
「でも、君はよく平気だね…海から、こんなに遠く離れているのに」
がりっ。
レタスに混じった小石のように、続けられた言葉は、早紀の奥歯の間で、嫌な音を立てたのだった。
置き去りにした、靴を拾いに戻る道すがら、の話だ。
ひょこひょこと、大きな身体が横を歩く。
警戒を解いた訳ではないのだが、早紀の目には、とても悪い人には見えなくて。
それに、変な現象は起きはしたが、害はなかった。
ということは、真反対といわれる天族ではないはずだ。
「あの…恩人って」
早紀は、彼を助けたつもりはなかった。
確かに、様子を見ようとは思ったが、彼女は医者でもなんでもないのだ。
治してやることなど、出来るはずがない。
しかし、いま彼はさっき倒れていたのが嘘のように、生気に溢れている。
「ああ…そうか、自分では分からないのか」
伊瀬は、困った笑みを浮かべた。
説明しづらいようだ。
「君の力をね…少し分けてもらったんだよ…すまない、非常事態だったから」
ひょこ、ひょこ。
片方の靴のせいで、足をつく高さが微妙に違うため、ぎこちない歩き方。
ん? ん?
その縦に揺れる影を見ながら、早紀は眉間を寄せていた。
早紀の力といえば、魔力だ。
その魔力を受けても、平気ということは。
「もしかして…同族の方ですか?」
おそるおそる、彼女はそれを口にしてみた。
魔族にしては、まったく毒がないと思ったが、早紀だって魔族である。
そう考えると、異端児が他にいてもおかしくないではないか。
「え? 君、お仲間かい?」
驚きながらも、何かを嗅ぎ取るように、伊瀬はすぅっと息を吸った。
魔族の匂いとか、するものだろうか。
「そういえば…ほんの少し? そうか、お仲間だったのか」
明るく、崩れる表情。
本当に嬉しそうだ。
早紀も、嬉しくなってきた。
冷たいばかりの魔族の中にも、こんな太陽みたいな人がいるのだと思うと、心が軽くなるのだ。
だが。
「でも、君はよく平気だね…海から、こんなに遠く離れているのに」
がりっ。
レタスに混じった小石のように、続けられた言葉は、早紀の奥歯の間で、嫌な音を立てたのだった。