極東4th
「そうだ」
伊瀬は、早紀をじーっと見つめた後、にこりと微笑んだ。
こわがらせまいと、声も微笑みもとりわけ柔らかくしている気がする。
心の奥の優しさが、透けて見えるようだ。
さっきの彼の言葉から推測するに、怖い立場(?)のようだが、それが信じられないくらいに温かく感じる。
伊瀬が、そうすればそうするほど、早紀は消えてしまいたい気分になるというのに。
彼は、早紀の前で、両方の人差し指を立てて見せた。
その指の腹同士を、ぴたりと合わせる。
「君に…似合う色を」
二つの人差し指が、すぅっと離れた。
指の間から、濃紺の糸が。
いや。
布が。
細く、長く。
しゅるりと、たわむように、ひねるように。
一瞬、早紀の目はそれに奪われた。
現れたのは──濃紺のリボン。
深い海の中と、同じ色。
「そうか…これが君の色か」
大きな両の手の上で、渦を巻くそれを、伊瀬は満足げに見つめた。
早紀も、その濃紺のリボンから、目を離せなかった。
差し出されるリボンを、だが、ふるふると首を横に振って拒む。
同族では、ないんです。
本当は、本当は私。
頭の中に、真理の冷たい目が閃く。
どうして、私は魔族だったのだろう。
海族だったなら、きっといまの一瞬を、喜んだに違いないというのに。
「大丈夫、よく似合うよ」
リボンは、しゅるんと自分から動き出した。
魔法──ならぬ、海法とでもいうのだろうか。
生き物のようにそれは、早紀の黒髪を絡め取る。
おかっぱの、横の髪を一房。
リボンごと、髪を編みこんで。
伊瀬は、微笑んだ。
早紀は──泣いた。
伊瀬は、早紀をじーっと見つめた後、にこりと微笑んだ。
こわがらせまいと、声も微笑みもとりわけ柔らかくしている気がする。
心の奥の優しさが、透けて見えるようだ。
さっきの彼の言葉から推測するに、怖い立場(?)のようだが、それが信じられないくらいに温かく感じる。
伊瀬が、そうすればそうするほど、早紀は消えてしまいたい気分になるというのに。
彼は、早紀の前で、両方の人差し指を立てて見せた。
その指の腹同士を、ぴたりと合わせる。
「君に…似合う色を」
二つの人差し指が、すぅっと離れた。
指の間から、濃紺の糸が。
いや。
布が。
細く、長く。
しゅるりと、たわむように、ひねるように。
一瞬、早紀の目はそれに奪われた。
現れたのは──濃紺のリボン。
深い海の中と、同じ色。
「そうか…これが君の色か」
大きな両の手の上で、渦を巻くそれを、伊瀬は満足げに見つめた。
早紀も、その濃紺のリボンから、目を離せなかった。
差し出されるリボンを、だが、ふるふると首を横に振って拒む。
同族では、ないんです。
本当は、本当は私。
頭の中に、真理の冷たい目が閃く。
どうして、私は魔族だったのだろう。
海族だったなら、きっといまの一瞬を、喜んだに違いないというのに。
「大丈夫、よく似合うよ」
リボンは、しゅるんと自分から動き出した。
魔法──ならぬ、海法とでもいうのだろうか。
生き物のようにそれは、早紀の黒髪を絡め取る。
おかっぱの、横の髪を一房。
リボンごと、髪を編みこんで。
伊瀬は、微笑んだ。
早紀は──泣いた。