極東4th
「す、すみません…ここです」

 そのまま消えてしまいたかった早紀だが、小さい声で自己を主張する。

 すると、大きな目が更に大きく見開かれた。

 間違いなく、早紀を見つけた目だ。

 その強いまなざしに、彼女は焼き殺されそうだった。

 一体、どちら様かは知らないが、こんな家にやってくる女性だ──魔女に決まっている。

「タミ、です…今後ともよろしく」

 パジャマ姿で、情けない姿の早紀に対し、それでも彼女は挨拶を投げる。

 ただ。

 言葉は控えめだったが、態度はやや上からだった。

 その様子に、早紀はビビりながらも、しかし、気になることがあった。

 今後とも?

 タミと名乗った女性は、そう言ったのだ。

 まるで、これから自分と付き合いが出来るかのように。

「ええと…」

 どう挨拶をしていいか分からずに、早紀は真理を見た。

 まだ、いっぱいわだかまりのある相手ではあるが、説明してくれそうなのは、この男しかいなかったのだ。

「これから、一緒に暮らす相手だ」

 その男とやらは、こともなげにそう言い放つのだ。

 一緒に…暮らす?

 ま。

 まさか。

 冷や汗をかきながら、おそるおそるタミを見た。

 手袋に、ブーツ。

 上から下まで全部真っ黒の彼女は、早紀を値踏みするように、じっと見ている。

 まさか、この女性が。

 頭の中に、零子との会話がよぎる。

『男は…子供を産めませんから』

 この女性が──真理の相手!?

 あいたぁ。

 早紀は、ベッドの上で半泣きになりそうだった。

 彼女の想像していた通り、キツそうな魔女と、最悪とも言える初めての対面をしてしまったのだから。

「早紀です…ヨ、ヨロシクお願いします」

 しゅうんしゅうん。

 小さくなりすぎた早紀を──またも、タミは見失ってしまったようだった。
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