極東4th
「海族を…知ってるんですか?」

 反射的に、早紀は食いついてしまった。

 いま、彼女の中で一番大きくなった、その種族の話だ。

 まさか、タミの口から出てくるとは、思ってもみなかった。

「私は、鎧鍛冶の一族よ…天族も海族も敵ですもの…敵を知らなければ、鎧は作れないわ」

 真理は、名前しか紹介しなかったため、彼女の口から語られることは、とてつもない驚きだった。

 もっと、貴族っぽいお嬢様かと思っていたのだ。

 鎧鍛冶、ってことは。

 早紀の頭に、鎧の男がよぎった。

 金属の防具のはずなのに、意思らしきものを持っている。

 彼を作った一族だろうか。

「海族って…どんな相手です? ま、まだ、戦ったこと、なくて」

 早紀にしては、随分慎重に言葉を選んだ。

 戦い以外で、海族に興味を示していると思われると、不都合だったのだ。

 これなら、自然な質問ではないか──多分。

「………」

 大きな瞳が、じっと早紀を見る。

 真意を見抜かれる気がして、つい目をそらしてしまった。

「そうね…彼らは、水の中では自由に姿を隠せるから…誘い込まれない方がいいわ」

 だが、少しだけタミの雰囲気が変わった気がした。

 言葉が、するすると出てくる、というか。

 さっきまでは、どこか早紀を警戒している様子も感じられたが、それが少しだけやわらかくなったような。

「雨の日は、更に危険よ…雨の日に海上で蝕が起きたなら、その蝕は諦めるべきだわ」

 それから──

 早紀は、あっけにとられていた。

 タミの唇は、どんどん知識を溢れさせていくのだ。

 蛇口をひねったかのように。

 もしかして、この人って。

 早紀は、ありがたい情報を流し込まれながら、タミを盗み見た。

 この人って──戦闘ヲタク?
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