極東4th
 ノックの音。

 早紀は、またタミだろうかと思った。

 まだ、彼女が持っていった魔力の結果を、彼女は聞いていないのだ。

「はい」

 そう答えると。

 ドアを開けたのは──真理だった。

 あー。

 瞬間的に、テンションが三段階ほど下がる。

 何というかもう、顔を見るのさえ憂鬱なのだ。

 今度は、どんな一方的なお話なのだろうか。

 愛想も無愛想も浮かべないまま、早紀は彼を見ていた。

 まっすぐに、真理は彼女の方へと歩いてくる。

 いつも通りの氷の表情だったが、用件も言わずに一直線だ。

 ひぃっ。

 どこで止まるのかと思っていたら、目の前まで来られる。

 その上に、顔まで近づけてくるではないか。

 な、何事!?

 背中に嫌な汗をかきながら、早紀はそれでも心理から目を離せなかった。

 感情の読み難い黒く冷たい目が、彼女をいつになく強く捕らえている気がしたのだ。

 間近の、唇が開く。

「お前の…父親は、誰だ?」

 ひそめられた声。

 早紀以外の、誰にも誰にも聞こえないようにと、空気をかすめるほどの低い声だった。

「え? あ?」

 ギクリとした。

 真理に気づかれる要素は、なかったはずだ。

 きっかけは、海族の伊瀬との出会いだったし、鎧の男はあの調子だし。

 他は。

 あ。

 早紀は、天を仰ぎたかった。

 いたではないか。

 そう。

 タミが。

 彼女は、早紀の味方でもなんでもない。

 真理に報告したって、何ひとつおかしくなかった。
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