初恋、のちパパになる―憧れのあなたは母になっていた―
 そして、十二月十日。
 玲は、二十六歳の誕生日を迎えた。
「玲君。お誕生日おめでとう」
「パパ、おめでとう」
 食卓を囲んで、家族三人で玲の誕生日を祝った。
「ありがとう」
「あと、もう一つ」
 審判の告知を受けてから二週間あまり経過した。その結果、関係者からの即時抗告はなく、予定通り審判が確定した。
「蒼生のパパになった記念日」
「うん」

 玲の好物のアップルパイは、遙花と蒼生が一緒に作った。
「パパ。これ、きょうママとつくったの」
「え、すご! 手作り?」
「ぼく、りんごいれたの。あみあみのなか」
 蒼生が得意気に話す。
「すごいなあ、よくできてる。めっちゃ嬉しい」
「蒼生、パパと一緒に食べるって張り切っちゃってね」
「そうなんだ。よし、じゃあみんなで食べよう」
 遙花が切り分け、それぞれの分を皿に盛り付ける。
「いただきます」
 玲はフォークを手に取り、アップルパイを一口頬張った。
「……うまっ」
「ほんと?」
「うん。めっちゃ美味しい」
「やったあ!」
 蒼生が嬉しそうに両手を上げる。

「パパ、もういっこたべて」
「うん」
 もう一口。
 甘酸っぱい林檎の味が、口いっぱいに広がった。
「……」
「玲君?」
 ふと、玲の手が止まった。
「……なんかさ」
「うん?」
「僕、幸せだなあって」
 ぽつりと呟く。
「誕生日に、二人が僕のためにアップルパイ作ってくれて。こうやって、一緒に食べて……」
 玲は蒼生を見た。
「今日から、法律上も本当に親子なんだなって」
「……玲君」
「いや、今までもずっと、僕は蒼生のパパだったつもりなんだけど」
 少し照れくさそうに笑う。
「でも、やっぱり……嬉しい」
 玲は瞼の奥が熱くなるのを感じた。
 目を伏せた瞬間――思わずこぼれ落ちた一滴。
 意図せず頬を伝った涙に、玲自身が驚いた。

「あれ?」
「パパ?」
「あはは……ごめん。なんか、涙出てきた」
 蒼生は椅子から降りると、玲のそばへ駆け寄った。
「パパ、ないちゃった?」
「うん。嬉しくて」
「いたいの?」
「ううん。全然痛くないよ」
 玲は蒼生を抱き上げた。
「蒼生。僕の息子になってくれて、ありがとう」
「?」
 蒼生は不思議そうに首を傾げる。
「ぼく、ずっとパパのこどもだよ?」
「……っ!」
 その一言で、玲の涙腺は完全に決壊した。

「……そうだね」
 小さな身体を、ぎゅっと抱きしめる。
「ずっと、僕の息子だよ」
 遙花はそんな二人を見つめながら、優しく微笑んだ。
「玲君。お誕生日、おめでとう」
「……ありがとう」
「それから、パパ三周年……じゃなくて、正式にパパになった記念日、おめでとう」
「うん……!」
 玲は涙を拭って、笑った。
「最高の誕生日だよ」
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