初恋、のちパパになる―憧れのあなたは母になっていた―
「それでは、新郎。ご入場よ~!」
ロゼの合図で扉が開く。
今日のためにチャペル仕様に模様替えをした、カフェ・ロゼッタ。
フラワーペタルを敷き詰めたバージンロードの上を、玲は歩いていく。
それは、二人の門出を心から祝う――フラワーデザイナーとして活躍する母、若葉のささやかな贈り物。
再び、扉が閉まる。
聖歌を歌うのは、瑠花と、歌手で律の母でもある梨歩。傍らでは、亞紗斗と律の親子がヴァイオリンの二重奏を奏でる。そして、新郎の父・エディがハープの音色を重ねていた。
*
その一方。
遙花は、扉の向こうにいる玲を思った。
玲は、両親が今日の結婚式に来てくれるよう、電話口で懸命に伝えてくれた。
「仕方ないよね」
遙花は諦めたように呟く。
「遙花」
「はい……って、え、え?」
遙花は、二度見、三度見をした。
そこに立っていたのは――。
「……遅れてすまない」
「お父さん……」
「遙花……」
「お母さんも……」
「……遙花」
遙花の母は、ウェディングドレス姿の娘を見つめた。
「綺麗になったわね……」
「お母さん……?」
「ごめんなさい、遙花……」
遙花の母は声を震わせ、何度も涙を拭った。
「あなたの今度のお相手の方……とてもあなたのことを大切にしてくれてるんだって。先日の電話でよくわかった」
「お母さん」
「あんなにもまっすぐに思いを伝えてこられて……初めはびっくりしたけど……あなたの子のことまで、ちゃんと愛して。それなのに、私たちは……血のつながりがどうとか、親としての責任とか、散々言ってたくせに……その責任から一番逃げてたのは、私たちだった……それを思い知らされて、情けなくて……」
遙花は、母の涙を静かに見つめた。
「ほんと、そう」
「孫のことも……」
「蒼生だよ」
「蒼生くん……」
「いい加減覚えて」
「ごめんなさい……遙花」
「何?」
「素敵な人に、出会ったのね。こんなにも、綺麗にしてもらって……」
「このヘアセット、玲君のお父さんがやってくれたの」
「え……」
「メイクと衣装は、玲君のお姉さんの瑠花ちゃん」
「そう……」
「あの。今日は、どうして……来てくれたの?」
「こんなこと言える立場ではないが……娘の結婚式に行かない親がどこにいる」
「……どの口が言ってんの」
「うるさい」
「でも、ありがとう」
扉越しに聞こえるロゼの声。
「さあ、ここからが本番よぉ~! それでは皆さんお待ちかね。新婦、ご入場~!」