私、いつの間に王子殿下の婚約者になったのでしょう? そして、悪役令嬢って何ですか?
 本を拾ったレティシアは装丁を眺めながら、首を傾げる。

『クロエ。これ手袋ではないけれど、白いから決闘を申し込まれているのかしら?』

『違うんじゃない?』

 その後、アーティ王子は王宮内の医務室に運び込まれて、リリアンはアーティ王子についていってしまった。

 訳が分からないまま、レティシアとクロエは近衛騎士に事の顛末を説明して、やっと帰れたというわけである。

「とんだ災難だったわ」

「本当に災難でしたね、お嬢様。婚約者でもない王子殿下から婚約者扱いされるとは」

「そうなのよ。私は今日までアーパー王子のことなんてすっかり忘れていたというのに」

「存じております」

 またしてもセバスティアンはアーティ王子の名前を訂正し忘れているが、彼にとってはどうでもいい人物なのである。

「それなのに、ピンクうさちゃんには悪役令嬢と呼ばれるなんて、どういうことかしら?」

 ピンクうさちゃんではなくリリアンだが、彼女もセバスティアンにとってはどうでもいい人物なのだ。
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