私、いつの間に王子殿下の婚約者になったのでしょう? そして、悪役令嬢って何ですか?
 レティシアの答えには構わず、アーティ王子は続ける。

『リリアンは側妃とするので許してくれるね』

『許すも何も……』

「殿下とは婚約してない」と言いかけて、白い何かが飛んできて直撃した。アーティ王子の顔面に……。

『ぶっ!』

 アーティ王子の顔面に直撃して、白い何かはバサリと床に落下した。

 ちらりと床を見ると、白い何かは本だった。そこそこの厚さがあるので、かなり痛かったはずだ。アーティ王子が。

 白い装丁の本でタイトルは「私、悪役令嬢。今あなたの後ろにいるの」だった。

 本を投げつけたのはリリアンだが、彼女はコントロールが下手でレティシアに投げたつもりがアーティ王子に当たってしまったのだ。

『きゃあ! アーティしっかりして! レティシア様ひどいです。避けるなんて!』

「いや、避けるだろう? 普通」と目撃した人々は心の中で突っ込んだ。

 アーティ王子はその場で気を失ったが、原因は本の衝撃ではない。驚いたショックで気を失ったのだ。全く気の小さい男だ。
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