青い空の下で

「あれ? この前の散歩の人ですよね。」と,

まるで今の二人を見ていたことを,
全然気にする様子もなく,
私に近づいてきて声をかけてきたからだ。

私は黙って,
やり過ごそうと視線を伏せたままで,
この二人がさっさといなくなってくれるのを待った。

しかし,
男は,私の左の足首を手で触ると,
「ひねってますね。早く冷やさないと。」
と言うと,もう一人の彼に
「犬を捕まえてきてくれないか。」
と頼んだ。


「あの,大丈夫ですから。ほっといてください。」
と,私はその男に話をした。
その男は,黙って私を抱き上げた。

「きゃー」
私は悲鳴に近い声をあげた。
足が地から離れる感覚が
私はとても苦手なのだ。

思わず私は,
恐怖心から男の首に巻いた腕に力を入れた。



「下ろしてください。怖いから・・・」

しかし,
男は有無を言わせぬ態度で
私を波打ち際までつれていくと,
ちょうどいい岩場に座らせて,
足を海水につけて冷やし始めた。


しばらくすると,
ワンワン!! 
モモがさっきの彼と一緒に返ってきた。

私は
「ありがとうございました。」
とお礼をいうと,リードを受け取って,
車へ戻ろうと立ち上がろうとしたが,
左足首に力が入らずに,
どうしようもなかった。

その男は,私からリードを奪うと,
もう一人の彼に渡して,
私を抱えて駐車場へ向かって歩き始めた。

もう一人の彼もモモを連れて,
じゃれ遊びをしながら,
ついてきた。


< 11 / 71 >

この作品をシェア

pagetop