青い空の下で
「ふーーん。宮路尚登・・・
 誰だ。それ。」

ふいに頭の上から声が降ってきた。

背もたれに身体を預け
上を見上げると,

バスロープを着て,
髪の毛をタオルで拭きながら,
メモを見下ろす渉の顔があった。

渉は,私の髪の毛をなでると
そのままその手を顔に持ってくると,
そのまま覆いかぶさるように
kissをした。

「どうした。その男のせいか。」

渉はそういうと,
冷蔵庫からミネラルウォーターをだすと
そのまま口につけた。

私は,黙ったまま答えなかった。

「気になるな。
 お前に関わる新たな男が
 でてきたのに,
 どうしてここにくる。」


私の真正面に座った渉が,
視線をそらさず私を見つめてくる。

私はその痛すぎる視線から
逃れるように,
その場から逃げるように,

部屋の中央に
備えられているグランドピアノまで進んでいった。

そして,
ベートベンのピアノ・ソナタ第17番『テンペスト』を弾きはじめた。


久々にさわる
このピアノの感触が,
とても心地よかった。

ピアノの一音一音が
心に落ち着きをもたらしてくれた。

< 23 / 71 >

この作品をシェア

pagetop