青い空の下で
そして,
事が終わった後の私は
そのまま渉の腕の中で眠った。

久々,私は夢を見た。

そう,真人の夢だった。
懐かしい声で私を呼んでいた。

「音羽,ここにおいで・・・・」

私は,
自分が泣いている感覚で目を覚ました。

横には,渉が寝息を立てていた。

「また,こんなことで
 死にたいという感情から
 逃げてしまった・・・」

私は渉を起こさないように
冷蔵庫まで行くと,
缶ビールのプルタブを開けて
一気に飲み干した。


その時だった。


電話の着信音が,
この静かな空間に劈くように鳴り響いた。

2コール鳴ると,
そのまま留守電に切り替わった。

私が着替えを手に取り,
シャワーを浴びに足を進めた時,


「先輩,お久しぶりです。
 真人です。
 久しぶりにそちらに行こうと
 思っています。
 来月,一緒に飲みましょう。
 詳しい日程が決まったら,
 連絡します。」


そう,電話から聞こえる声は,
真人自身の声だった。

私は,
金縛りにあったかのように
動けなくなった。

この声をどれくらい聞きたくて,
がまんしてきただろうか。

こんな不意打ちの形で,
私の耳に届いた真人の声は,
あの頃と変わらず
とても暖かい声だった。

私の眼から
次から次へと涙が溢れてくるのを
抑えることができなかった。

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