青い空の下で
会いに行こうと思えば,
会いにいける距離に真人がいる。

時差のある遠い異国から
帰ってくる真人に会える。

だけど,
真人は私に会いたいとは
絶対思っていない。

それだけは確信を持って言えること。


数日後,
「あの,すみません。」と
買い物途中の私は声をかけられた。

振り返ると,
何処かであった様な
華奢なきれいな男の子が立っていた。

あまりにも中世的な危うい美しさを
備えた男の子だった。

「どこかでお会いして事がありますか?」

と私はその美少年に興味のない風に聞いた。

「あの覚えていませんか。
 海岸で足をひねった時に,
 尚登さんと一緒にいたのですが・・・」

私は,自分の記憶をたどり寄せて,
海岸沿いの岩陰でみた綺麗なkissシーンを思い出した。

「あ・・・あの時の・・・」

この美少年に会う時まで,
高速船であった尚登と
メモを渡されたことも
この少年のことも
全然気にかけることもなく,
思い出すこともなかった。

「お時間いかがですか? 
 ちょっと話をしたいことがあって・・・・」

私は周りを確認しながら,
知り合いがちょうど買い物をしていないことに少し安心しながらも,

「人に見られると,
 面倒だから・・・
 別のところなら・・・」

「分かりました。
 1時間後に,
 あの海岸の駐車場で待っています。」

そう少年は小さく言うと,
店を後にした。

私はその背中を
しばらく見送りながら,
真人の電話の後から,
尚登という名の男のことを
露とも思わず
生活していたことを思い出して,
すこし後ろめたさを感じた。

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